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トンデモ人事部が会社を壊す

公務員もビックリ!企業の人事部にも蔓延する“お役所仕事”の実情

山口 博
【第22回】 2015年5月19日
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お役所仕事的なプロセス至上主義が、国や公共機関から、企業の人事部門にも伝播している。サービス提供という本来の目的意識が希薄となり、制度や手順の運用・徹底のみにエネルギーが費やされる、いわば制度疲労だ。解決のためには、国において選挙を行うがごとく、人事部門においても人の入れ替えをするしかない。

「郵送でしかお渡しできません!」
健康保険組合の徹底した“お役所仕事”

 「取りに来ていただいても、郵送でしかお渡しできません」、「従って、一両日でお渡しすることはできません」、「受け取るまで、1週間は、みてください」――。これは、自社が加入している健康保険組合組織に、自社の社員数十名の被保険者名簿を出力していただきたいとリクエストした際に受けた、回答である。

規則を前面に出す「お役所仕事」にイライラした経験のある人は多いはず。残念なことに、企業の人事部にも蔓延している Photo:Paylessimages-Fotolia.com

 理由を問うと、立て板に水の如く、次々とできない理由が示された。

 「個人情報なので、厳格に取り扱っている」、「全国の事業者を平等に扱うために、近隣のみ優遇することはできない」、「事務フローが決められており、逸脱できない」、「特定企業のみ特別扱いすることは、公的組織として許されない」、「郵送することは、私の仕事ではない」。

 ひとつひとつ、理解を示しながら、しかし電話では埒が明かないと思い、必要となるであろう書類を用意して、事務所へお伺いして、あらためて丁重にお願いした。金曜日の午後のことである。

 急いでいたため、私はやすやすと引き下がるわけにはいかなかった。「個人情報を厳格に取り扱うことは極めて重要であると理解している。会社代表者ならびに人事責任者の印鑑を申請書に押印し、法人登記簿、印鑑証明、人事責任者である本人写真付確認書類を持参したので、持ち帰らせていただけないか」と相談してみたが、「郵送で授受するという規則を逸脱することはできません」という回答であった。

 あれこれ説得してみたもの、のれんに腕押し。途方にくれていると、ようやく、「申請書類の受理だけはしましょう。しかし、送付は、郵送でさせていただきます」とのこと。「では、速達料金を支払わせていただくので、速達で郵送していただきたい」旨を伝えると、「そのような前例はないので、できない」の一点張り。

 押し問答の末、「夕刻の窓口閉鎖の時間になりましたので、閉めさせていただきます」とのこと。「従って、お引き取りください」という先方の声が届いたように思い、脱力感に耐え切れぬ思いで、しばし呆然としていた。すると、担当者が再び近づいてきた。追い払われるかと身構えると、「上と協議した結果、郵送不能の預かり扱いで、特別に手渡しするので、月曜の朝、取りに来てください」と、小さな声でおっしゃった。

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山口 博

やまぐち・ひろし/慶應義塾大学法学部政治学科卒(サンパウロ大学法学部留学)、長野県上田市出身。国内大手保険会社課長、外資系金融保険会社トレーニング・シニア・マネジャー、外資系IT人材開発部長、外資系企業数社の人事部長、人事本部長歴任後、現在、コンサルティング会社のディレクター。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日本ナレッジ・マネジメント学会会員。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。

 


トンデモ人事部が会社を壊す

サラリーマンの会社人生のカギを握る人事部。しかし近年、人事部軽視の風潮が広まった結果、トンデモ人事部が続々と誕生している。あっと驚く事例をひもときながら、トンデモ人事部の特徴や、経営陣がすべき対処法などを探っていく。

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