デジタルを用いて表現の可能性を追求するチームラボ。代表の猪子寿之氏は、メディアの未来をどのように見ているのか。話はインターネットの可能性から知の本質までに及んだ。『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』7月号でのインタビュー記事から抜粋してお届けする。(構成/加藤年男 写真/鈴木愛子)
二次元の思考は浅くなる、
多次元で考える力が必要
――チームラボでは昨年11月末からこの春にかけ、お台場の日本科学未来館で「チームラボ 踊る!アート展と、学ぶ!未来の遊園地」という展覧会を企画されていました。子どもたちが描いた絵が立体になってスクリーン上で動く「お絵かきタウン」など三次元を意識したアトラクションが大人気でした。あの狙いはどこにあったのですか。
子どもたちに三次元で物を考えることを教えたかったから。立体や空間を認識する能力って極めて重要なんです。たとえば、空間をどうつくったら人々は快適に動けるかとか、感動するかとか、楽しめるかとか、それは空間デザイナーや建築家とかの仕事だけではなくなっている。
でも人ってすぐ概念を二次元で考えますよね。それによって人類はいろいろ間違いを犯してきた。地球のプレート・テクトニクス理論もあんなふうに考えると、辻褄が合わないんです。最近やっと間違いに気づいたようだけど、あれも二次元で考えていたから起こった間違いです。組織構造なんかも二次元的な思考の典型。たとえば、ピラミッド型組織にしても平面で書けちゃうでしょ。
高次元で考える訓練がされていないから一般の人の思考は二次元なんです。二次元の思考は浅い。低次元の思考の浅さは、一次元でしか考えてはいけないと仮定してみるとわかります。どれだけショボいことになるか想像してみたらいい。
たとえば、組織構造を一次元で考えると一列になってしまう。社長がいて上級副社長がいて、中級副社長がいてって、1000人の組織に1000の肩書きが必要になる。上から下まで情報を伝えるにも998人を介在しないといけない。どれだけ効率が悪い組織かわかるでしょ。
同じように、普段三次元や四次元で考えている人は、なぜ世の中の人は二次元でしか考えられないんだろうと思っています。でも、99%の人は二次元で考えているから、それが普通だと思って気づいていない。ありとあらゆる概念を直感的に二次元で考えているがゆえに思考がすごく浅いんです。本来は三次元とか四次元とか高次元で考えるべきなんですね。その点、インターネットの世界は超高次元です。