ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
投資は「きれいごと」で成功する
【第3回】 2015年6月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
新井和宏 [鎌倉投信 株式会社 取締役 資産運用部長]

なぜ鎌倉投信とライフネット生命は
「強い共感」を集められたのか?
【特別対談】新井和宏氏×ライフネット生命・出口治明氏(2)

1
nextpage

『投資は「きれいごと」で成功する』を上梓し、社会性と経済性は両立できることを示した、鎌倉投信ファンドマネージャー、新井和宏氏。
投資信託の世界で金融の常識を打ち破ってきた新井氏が、生命保険の世界で金融の常識を変えてきたライフネット生命・出口治明氏と、お金、企業、社会について縦横無尽に語り合い、その本質に迫る特別対談第2回。2人は、金融という「冷たい」ものを、いかにして「共感できるもの」に変換してきたのか? 苦労の中でつかみとった「伝え方」とは。(写真:宇佐見利明)

信頼は、理詰めの世界からは生まれない

出口 治明(でぐち・はるあき)
ライフネット生命保険株式会社 代表取締役会長兼CEO
1948年三重県生まれ。京都大学を卒業後、1972年に日本生命保険相互会社に入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当するとともに、生命保険協会の初代財務企画専門委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事する。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て、同社を退職。2006年に生命保険準備会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年の生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社を開業。2013年6月より現職。著書に、「生命保険入門 新版」(岩波書店)、「直球勝負の会社」(ダイヤモンド社)、「仕事に効く 教養としての『世界史』」(祥伝社)など多数。

出口 あともうひとつ、ご著書で気になったことがあります。表紙に「非常識な投資のルール」とありますよね。一見すると、「数字、ファクト、ロジック」の世界ではなく、想いや感情、理念を重視する投資本のように見えます。でも読んでみると、素人ながらものすごく合理的なことが書かれていると感じました。数式は書かれていないけれど、とても合理的

新井 もう、一番の褒め言葉です。ありがとうございます。

出口 私の知人がこの本を読んで「これ、鎌倉教だね」と言っていました。「信用」や「信頼」という言葉が出てくるから、投資本とはほど遠いと感じたのでしょう。でも私は「君は読み方が浅い」と言ったのです。極めて科学的な本だ、と。そう言ったら納得していました。

新井 ありがとうございます。出口さんにそう言っていただけるなら嬉しいです。これまで、「金融は冷たい」という認識のなかで、いかに「共感できるもの」に変換できるかと考えてきました。でも、もともと理系なので、合理的でロジカルなベースがないと自分が疑ってしまうんです。

出口 当社も同じです。ライフネット生命は設立以来3ヵ月に1度は「お客さまの集い」を行ってきました。お客さまの声を聞くためなのですが、最初は5名しか来てくださらなかった頃もあります。うち2名は身内。僕と岩瀬(現ライフネット生命保険社長)が実際に加入してくれた友達に「来てほしい」と電話したのです。

新井 そうでしたか。

出口 それで、1回目か2回目かの集いで、ご夫婦のお客さまをエレベーターまでお送りしたときに、「今日はありがとうございました」とお伝えしたら、奥さまがご主人に「あなた、ライフネット生命が本当にあってよかったね」と言われたのです。
 おそらくご主人がライフネット生命のことを気に入っておられて、でも奥さまは、インターネットの中にしかない保険会社ということで不安になって、ふたりで集いに来られたのでは、と。それで会社をご覧になって「本当にあった」と安心されたのだと思うのです。

新井 なるほど。

出口 私はとてもショックでした。ゼロから免許を取って生命保険会社を立ちあげたのは、ライフネット生命が戦後はじめてです。免許を取ることがとても大変で、総理大臣から免許をもらったら、無条件にお客さまは信頼してくださると思っていた。でも、そうではなかった。ですから、ゼロから始まった会社が信頼をいただくことや、難しい保険という商品について正確に伝えることは、至難の業だとわかりました

新井 おっしゃる通りですね。

出口 ちなみに、その2~3ヵ月後に大阪で行ったときも、同じようなことがありました。ご主人が「ライフネット生命に加入するのは大変でした」と言われる。「なぜですか?」と聞いたら、「嫁が、あんたはアホやって言うて許してくれないんです」と。「契約しようとしているのは終身保険なのに、まだ設立して1年しか経っていない会社で買うなんてアホや、あかん」と言われたそうです。でも、2~3ヵ月経ったら、嫁が許してくれた、と。

新井 なぜですか?

出口 「テレビコマーシャルを3回ぐらい見た。もう潰れへんやろ」と。

新井 なるほど。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
働く意義の見つけ方

働く意義の見つけ方

小沼 大地 著

定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2016年9月

<内容紹介>
青年海外協力隊からマッキンゼーを経て「企業と社会をつなぐNPO」を起業した著者が提唱する、ビジネスパーソンの新しい働き方。パナソニック・日立製作所など手企業を中心に25社以上が導入、100人以上の日本の会社員が世界で社会課題の解決に取り組む「留職(りゅうしょく)」を経験し起こした変化とは?

本を購入する
著者セミナー・予定
(POSデータ調べ、9/11~9/17)


注目のトピックスPR


 

新井和宏 [鎌倉投信 株式会社 取締役 資産運用部長]

 

1968年生まれ。東京理科大学工学部卒。
1992年、住友信託銀行(現・三井住友信託銀行)に入社。2000年には、バークレイズ・グローバル・インベスターズ(現・ブラックロック・ジャパン)に入社。企業年金・公的年金などを中心に、株式、為替、資産配分等、多岐にわたる運用業務に従事し、ファンドマネージャーとして数兆円を動かした実績がある。だが2007~2008年、大病を患ったこと、そしてリーマン・ショックをきっかけに、それまで15年以上信奉してきた金融工学、数式に則った投資、金融市場のあり方に疑問を持つようになる。
2008年11月、志を同じくする仲間4人で、鎌倉投信株式会社を創業。2010年3月より運用を開始した投資信託「結い 2101」の運用責任者として活躍している。経済的な指標だけではなく社会性も重視する、投資先企業をすべて公開するなど、従来の常識をくつがえす投資哲学のもとで運用されている商品でありながら、個人投資家(受益者)8,900人以上、純資産総額130億円超(どちらも2015年2月時点)となっている。また、「投信ブロガーが選ぶ!Fund of the Year」でも上位の常連となり、また、2013年には格付投資情報センター(R&I)でも最優秀ファンド賞(投資信託 国内株式部門)を獲得するなど、人気、実績を兼ね備える投資信託へと成長している。
他に、横浜国立大学経営学部非常勤講師、特定非営利活動法人「いい会社をふやしましょう」理事、経済産業省「おもてなし経営企業選」選考委員(平成24、25年度)も務めている。

 


投資は「きれいごと」で成功する

「鎌倉投信」という運用会社を、ご存じでしょうか。
その社名どおり、鎌倉に社を構え、投資信託を運用、販売する、創業約7年のベンチャー企業です。
販売している商品は、「結い2101」という投資信託1つだけ。

しかし、いま、この小さな金融ベンチャーは、
2つの理由で日本中から大きな注目を集めています。

1つは、「結い2101」の投資先企業の特徴です。
鎌倉投信は、利益をあげながら社会に貢献している「いい会社」にしか投資しないのです。

そしてもう1つが、「実績」です。
2014年、格付投資情報センター(R&I)の選定する『R&I ファンド大賞 2013』において、
1位を意味する最優秀ファンド賞(投資信託 国内株式部門)を獲得したのです。

この鎌倉投信の「運用」を支えるファンドマネージャー、新井和宏氏が、
自らの投資哲学と手法から、
本当に「きれいごと」で投資がうまくいくのか、を解き明かします。

「投資は「きれいごと」で成功する」

⇒バックナンバー一覧