LINE(株)CEOを退任後、C Channel(株)を立ち上げた森川亮さんの初著作『シンプルに考える』の発刊を記念して、(株)ディー・エヌ・エー創業者である南場智子さんとのトークセッションが行われた。テーマは「結果を出す人の思考法~すごい人はなぜ、すごいのか?」。南場さんのベストセラー『不格好経営』『シンプルに考える』から引用した言葉をもとに語り合っていただいた。(この連載は、6月4日に東京カルチャーカルチャーで行われた対談イベントのダイジェスト版です。構成:田中裕子)

「成長したい」なんてこと忘れるくらい、
必死になった人が成長する

【南場智子×森川亮 特別対談(1)】<br />「成長したい」という人ほど、成長できない理由<br />

――本日は『シンプルに考える』発刊記念イベントに、株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)創業者であり現取締役ファウンダーの南場さんが駆けつけてくださいました。

森川 南場さん、今日はお忙しいところありがとうございます。

南場 よろしくお願いします。私、『シンプルに考える』を読んで、ものすごくピンと来たのね。考え方にまったく違和感がなかった。とくに、「モチベーションだへちまだ」ってあたりなんて、もうドンピシャで。

森川 ええ(笑)。

南場 「今日はモチベーションが上がらない」なんて言う人がいるじゃない。「プロなのになんでそういうこと考えるのかな」って疑問でしょうがなくて。プロ野球選手は、球場に集まってくれた3万人のファンの前で「今日はモチベーション上がらないから打ちたくない」なんて言わないでしょ?

森川 そんなことを言ったら、野球人生が終わってしまいますからね(笑)。

南場 プロ野球選手とプロのビジネスマンの我々とどう違うのか、という話です。

森川 厳しいものなんですよね、ビジネスは。僕は日本テレビとソニーを経てLINE(株)の前身であるハンゲーム・ジャパンに転職しました。けれど、大企業2社を経験していても、MBAで学んでいても、小さなベンチャー企業で活かせることってあんまりなかったんですよ。

南場 たしかにそうですね。

森川 大企業にいると、その組織で重宝されるスキルやキャリアパス、あとは資格取得とかばかり気にする人が多いでしょう。でも、仕事って本来、もっと「なまなましい」もので。

南場 そう、なまなましい。

森川 ええ。野生のなかで獲物を捕えるようなものだと思うんです。厳しい環境のなかで、厳しい自由を課せられる。そんなイメージですね。

――「厳しい自由を課せられる」という言葉が出たところで、『不格好経営』から、この言葉を引用したいと思います。「自分の成長だへちまだなどという余裕がなくなるくらい必死になって仕事と相撲をとっている社員ほど、結果が出せる人材へと、驚くようなスピードで成長するのである」。南場さん、いかがでしょうか?

南場 学生さんと話していると、「自分が成長できる会社を選びたい」という人が多いんですよね。もちろん成長はすべきだと思うし、考え方としては間違ってはいません。けれども、入社初日から給料をもらっている以上、プロフェッショナルとして自分を追い込んで成果を出すのが第一にすべきことで。

森川 会社は学校じゃないですからね。「与えられる場所」ではないというか。

南場 そうそう。必死になるからこそ、結果として成長するわけでしょう? どうも、「成長を考えるほど成長しない」というパラドクスがあるような気がするんですよね。