国内外の市場関係者にとって、この6月16日-17日に開催された米FOMC(連邦公開市場委員会)は、これまでよりも注目度が格段に高かったと思われる。というのも、今回のFOMCからいつでも政策変更を判断するとされており、金融市場では以前から、2015年6月のFOMCが実質的な米国利上げの起点になるのではないか、と目されていたからだ。ただし足元では、米国経済の先行き懸念が浮上したことなどから、6月の利上げはまずないだろうという見方が大勢を占めるに至っていた。注目の結果は「事実上のゼロ金利維持」。市場関係者は、この決定の背景をどう読むべきか。結局、利上げの開始時期はいつ頃になりそうか。土屋貴裕・大和総研シニアエコノミストが、FOMCの結果を受けて分析する。

声明文よりハト派的な記者会見
気になるイエレン議長の胸の内

以前から注目されていた6月のFOMCの結果は、事実上の「ゼロ金利維持」。イエレン議長の記者会見は、ハト派的な印象を世間に与えた。写真は米国金融の中心地・ウォール街

 2015年6月16日-17日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、事実上のゼロ金利政策を維持し、保有する資産規模を維持することを決定した。今回のFOMCからいつでも政策変更を判断するとされていたが、1-3月期の実質GDP成長率が下方修正され、マイナス成長に転じたことから、ゼロ金利政策維持は想定通りの結果である。決定は4会合連続での全会一致となった。

 イエレン議長の記者会見は、最初の利上げ時期を必要以上に重要視すべきではないとし、金融政策は利上げ開始後もかなり長く緩和的であり続けるとして、利上げペースが緩やかになることを重視すべきとした。声明文では経済の現状認識と見通しが上方修正された一方で、金利見通しはわずかな低下にとどまる。両者の相対関係からは、緩やかな利上げペースが想定されていることになるが、イエレン議長の会見ほどハト派的とは言いがたい。

つちや・たかひろ
1997年名古屋大学大学院国際開発研究科博士課程前期修了。同年大和総研入社。経済調査部、内閣府出向、投資戦略部等を経て、2012年4月より現職。担当は米国経済全般。

 声明文からは、利上げ時期についての直接的なヒントは得られなかった。記者会見では、利上げ開始決定には、労働市場のもう一段の改善と、輸入物価下落によるインフレ率の押し下げ圧力が後退する必要性が示唆されたが、加えて、最初の利上げ決定時に市場に不要な悪影響をもたらさないよう地均しを進めていると考えられる。市場との対話を進めるイエレン議長の記者会見は、声明文や公表資料よりもハト派的な印象をもたらしたと言えよう。

 次のFOMC会合は7月28日-29日で、イエレン議長の記者会見などは予定されていない。数ヵ月の様子見の必要性が示され、4-6月期のGDP統計が公表される直前の7月会合で、政策変更の可能性は低いだろう。