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人生の99%は思い込み――支配された人生から脱却するための心理学
【第12回】 2015年6月22日
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鈴木敏昭 [心理学者]

「地球が丸い」も思い込み!?
あなたの「思い込み」はこうして生まれた!

なぜ肝心なときに失敗してしまうのか、なぜ幸せを自ら崩壊させてしまうのか・・・・・・。実はこれらはすべて思い込みからなる「人生脚本」のせいだと語るのは、『人生の99%は思い込み』の著者である心理学者の鈴木敏昭。思い込みは生まれながらのものではない。では、どんなタイミングで植え付けられるのだろうか? また、思い込みの根拠となっているものとはなにか?

「なぜ?」のループを打ち切るところから
「思い込み」は生まれる

 なぜ人は、思い込みの心理を持つようになるのだろうか?

それは「思い込み」こそが脳の負担を減らし、楽に生きることに寄与するからだろう。

 仮に思い込みがまったくなくなったら、私たちはどうなるだろうか? 極端な話、「服は着るべきかどうか?」「家族は信用すべきかどうか?」「食事は摂るべきかどうか?」というところから考えなければならない。
 人は、より効率的に生きるために、無駄な思考をしないように「思い込む」のである。

私たちが日常生活を営むうえでは、「なぜ?のループ」を適当なところでうち切る必要がある

 小さな子どもは、思い込みが発達していない。よって、大人に対して「なぜ? どうして?」という質問を繰り返す。
「なんで車は速いの?」
「なんでお父さんは会社に行くの?」
「なんで太陽って明るいの?」
 など、大人にとっては自明のことをいちいち立ち止まっては考えるのである。

 そこで大人は、こうした永遠に続く子どもの疑問を打ち切る必要に迫られる。
子「どうして幼稚園に行かなければいけないの?」
親「それは、幼稚園に行かないと小学校に行けないからだよ」
子「なんで小学校に行くの?」
親「勉強をするためだよ」
子「なぜ勉強しなくちゃいけないの?」
親「それは……? どうしても! もういいから明日の支度をしなさい!」
 というようなやりとりを、子どものときに親とした人も多いだろう。

 このように、「なぜ?」「どうして?」と根拠を永遠にどんどん遡っていくことを「無限背進」という。子どもは「なぜ?」を繰り返せば、やがて最終的な真実に到達できると考えるが、良識ある大人はそのような問いかけに、究極的な答えがないことを知っている。だから適当なところで質問を切り上げさせる。
 そこで答えを失った子どもは、「勉強はしなくてはいけないもの」と、疑問に感じながらも受け入れるようになる。それが思い込みになるのだ。

科学、地位、常識など、
「思い込みの根拠」も思い込み

 あるとき「自分探し」というものが流行った。本当の自分を見つけるために旅に出る若者も多かった。自分のやりたいことが見つからない、今の自分は本当の自分とは違う、人生の目標が見つからない。こういった悩みを抱える者は、転職を重ねたり、お金に余裕のある人は世界中を旅してまわったりする。

 しかし「本当の自分」というものはない。思い込みである

というよりも、「自分」というのも思い込みなのだ。
自分というものがあるのだと思い込んで生きているが「自分」という存在すら思い込みがなせるわざ。自分というアイデンティティを拠り所とすることで安心しているのが、私たち人間なのだ。

 この世は思い込みだらけであり、思い込みがこの世界をつくりあげているのである。

 さて、そんな思い込みの根拠に使われるのは、主に3つの材料がある。
 (1)科学的、客観的なデータ、(2)地位や肩書、(3)常識や世間体だ。しかし、この根拠とされているものですら「思い込み」に侵されている。その点について指摘しておきたい。

(1)科学的、客観的なデータ
当たり前のこととされている、「地球が丸い」というのも思い込みの可能性がある。
 私が学生180人に「地球が球体であると信じる」確信度(最高100%)について書いてもらったところ、平均が約85%であった。
「信じる根拠」について書かせたところ、(1)「宇宙からの画像を見たから」(132人)、(2)「教科書で教えられたから」(76人)、(3)「みんながそう信じてるから・常識だから」(51人)が上位3つであった。
 なお、信じない理由では「自分が見たわけではないから」が多かった。このような視点はとても重要である。
 信じる根拠の上位3つについて、もしそれらが正しい根拠を問い詰めたら、おそらくどこかで答えられなくなるだろう。実際に、自分が見ていないから、「本当に丸いのか?」と聞かれ続けると、答えようがなくなるのだ。科学やデータで自明とされているものも、実は思い込みでつくられているかもしれないのだ。

(2)地位や肩書
「テレビで紹介されていたから」「お医者さんが勧めているから」「有名人も使っているから」……このような理由で、盲目的に何かを信じる人も多いだろう。
 納豆、バナナ、ロングブレスと毎年のようにダイエットが流行っては消えていく。それらのダイエットを試してみる人は、テレビや雑誌で紹介されているのを見て、「みんながやっているから効果があるに違いない」と思っているのではないだろうか。
 このように、「メディアで紹介されている」という事実も一つの根拠になるし、社会的な地位を持った人がする発言も根拠のよりどころになるのだ。
 近年増えている振り込め詐欺も地位や肩書を巧みに利用している。「警察ですが……」「社会保険庁のものですが……」などと電話口で言われると、ふいに信じてしまうものなのだ。
地位や肩書はあくまで人が後から作り上げたもの。そこに価値があり、信用できるというのは完全に思い込みである。

(3)常識や世間体
「その企画、みんな反対してますよ」「あのプロジェクト、みんな面白いって言ってます」など、「みんな」というワードは安易に使いがちだ。このとき、「みんなって誰?」と聞いてみると、たいてい三人ぐらいしか名前を挙げられない。
 また、行列のできているレストランを見て、「おいしいから並んでいるのだろうな」と思って並ぶ人は少なくない。実際に食べてみると、「べつに普通だよな。わざわざ並ぶほどでもない」と思うような味。自分以外の客も、食べ終えて釈然としない表情をしている。それなのに行列は絶えることがなく続いている。そんなことがある。
 みんなが並んでいるからおいしいに違いないというのは、同調心理による思い込みだ。このように、他の人々が正しいと考えているものを自分も正しいと思うことを、「社会的証明」と心理学では呼んでいる。
 この社会的証明の罠にはまってしまったら、「みんながいいと言っているんだから、いいのだろう」と、判断軸が自分ではなくまわりの人になってしまう。自分の頭で考えられなくなるのだ。
「みんな言っている」「行列ができている」というのは判断の基準にはなりえない。私たちは、常識や世間体を根拠にしがちだが、それも思い込みに侵されていることを認識すべきだろう。

 人生がすべて思い込みに支配されていることが見えてきた。次回は、思い込みを生み出すメカニズムに迫る。

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鈴木敏昭 [心理学者]

◎1950年東京生まれ。教育学修士(京都大学/1980年)。
◎77年横浜国立大学教育学部卒業後、80年に京都大学大学院教育学研究科(修士課程)修了。85年に京都大学大学院教育学研究科(博士課程)単位取得満期退学。その後、四国女子大学家政学部助教授などを経て、96年より四国大学生活科学部教授。
◎専門分野は心理学。「自己意識の構造」が最大テーマ。その主な下位領域として自尊心、性意識、思い込み、人格形成などを研究。
◎中学2年のときから「自分とはなにか?」に関心があり、以来ずっと「自分」についての研究に没頭している。
◎日本心理学会、日本発達心理学会、教育心理学会、日本社会心理学会所属。著書に『自己意識心理学概説』(北樹出版)、『自己成立の発達心理学』(ふくろう出版)、『思い込みの心理学』(ナカニシヤ出版)などがある。


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