日本式のテストでは
創造力や想像力は育たない

 最近、人工知能の進化に関するニュースが相次いで報道されています。近い将来、ロボットが社会で普通に活躍する時代が訪れたら、人間はもう不要な存在になってしまうのかもしれません。そうならないために、今後必要なのは「クリエイティビティ(創造力)やイマジネーション(想像力)を育てるための教育」です。今回は、この問題を掘り下げてみたいと思います。

 現在、日本のテストのスタイルは「7+3=?」というように、1つの答えを導き出すものが普通です。でも、これは海外の教育関係者からすれば不思議な話。というのも、答えがわかっていることをわざわざ問題にしているからです。では、海外ではどうかというと、「□×□=24」など、いく通りもの答えを考えさせるようにするのが一般的です。

 この違いは、「What(事実)」を覚えさせるよりも、「Why」を考えさせて創造力や想像力を養うことのほうが重要とする考え方から生じています。
私たちが社会に出て日々直面する問題は、「1+1=2」のように答えが1つだけというケースはほとんどありません。答えがいく通りもある出題によって、子供自身に考えさせ、それぞれが意見を述べやすくし、他者の力を借りながら問題を解決していく――。これこそまさに実社会で生かせる教育なのです。

 日本人は記憶力が良く暗記がとても得意ですが、今やグーグルで簡単に情報を検索できる時代。情報を知っているだけでは価値はないといってもいいでしょう。得た情報をいかに自分の頭で処理し、知恵やアイデアにつなげていけるか。そこがポイントです。

ボランティアで身につけてほしい
「他者に助けを求める力」

 これからの子供にとって重要なのは学校教育ばかりではありません。OECD(経済協力開発機構)の教育会議でも提言しましたが、私は「ボランティア」の経験がとても有益だと考えています。

 ボランティア体験は、身体的・社会的に自分よりも弱い人がいることを知り、多様性を実感できるよい機会となります。そこでは、「困っている人がいたら助けるべき」ということと同じくらい、いいえ、むしろより強く「自分が困っているときは助けを求めてもいいんだ」ということを学ぶのが重要です。

 人生に挫折はつきものですから、ときには自分が誰かの手を必要とすることもあるでしょう。弱さは決して恥ずかしいことではない。困難に直面したときに一人で抱え込むと、乗り切ることができず、取り返しのつかない失敗を犯すことにもなりかねません。

 学校や塾で忙しい子供にボランティアをさせるのは一見、時間のムダのように思えるかもしれませんが、いざというときのために「他者に助けを求める力」はぜひ身につけておいてほしいと思います。