「どうでしたか?」と銀行から帰ってきた3人を麻理と鈴木が出迎えたが、3人の表情から交渉が失敗に終わったことを悟った。スティーブは2人に状況を説明した。

「まるで駄目だったね。銀行の上層部から、リスク管理を強化するように強い方針が出ている様子だったね」

「そうなると、やはり東京本社からの支援要請を急がないといけませんね」と鈴木。

 重苦しい空気が立ち込めそうになったが、危機状況にあるときこそ、リーダー自らがチームメンバーを元気づける雰囲気を作ることが重要だ。健太は本社からの支援をできる限り早く取りつけるべく交渉していることを皆に告げ、暗い雰囲気を変えようとした。

「海外事業部と話をしていますが、黒字化のシナリオに確信が持てれば、支援の稟議は通すと言ってくれています。引き続き業績改善の取り組みを加速させ、目に見える成果を出すようにしましょう。それを本社にきちんと説明して、当社の建て直しが軌道に乗っていることを理解してもらいます。そうすれば支援の意思決定を早めにしてくれるはずです。それまでは、売掛金の回収や支払いサイトの延長などで、当面の資金不足を乗り切りましょう!」

(毎週火曜日と金曜日に更新。次回は8月4日更新予定)