先日、米国のオバマ大統領が、ギリシャやドイツなどEU主要国の首脳と電話会談を持ちました。ギリシャの財政問題が欧州内だけで封じ込められ、米国に経済的な影響が波及しないかという面のチェックと、軍事面のリスクを抑えられそうかという確認が目的だったようです。

 ギリシャは地中海の「地政学的な要所」で、それが、オバマ大統領の電話会談の理由です。ギリシャの背後には、現在、紛争地域であるウクライナや中東があります。このような地政学的な要地であることが、歴史上、ギリシャを特別扱いする要因となっていたのです。

 ギリシャのチプラス首相はギリシャ共産党の出身であるせいか、中国やロシアとも深い関係を持っています。中国はギリシャ随一の港湾を買収しようとしています。ロシアからはエネルギーの供与が提案されています。

 また、欧州の人々はその思想や文化の起源をギリシャに求める向きもあります。ローマ帝国ですらそうでした。これもギリシャを特別扱いする理由でした。ドイツなどの欧州を始め、移民が中心の米国ですら、建築物を始め、いたるところにギリシャ神話を含めたギリシャ文化に対する憧れの象徴が見られます。

ギリシャのユーロ脱退はあり得ない

 ギリシャのユーロ離脱の議論については、残念ながら通貨についての基本的な知識が不足しているものも多数見られました。そもそも、EUの条約に「ユーロ離脱」についての規定はありません。逆に「EUに加盟したら可及的速やかに、ユーロに移行すること」と明記されています。つまり、ユーロ導入は一方通行の「帰らざる河」なのです。

 それでも、なお、ユーロ離脱の議論をするのであれば、これがユーロの規定にない以上、それはEUそのものからの離脱を意味します。EUの中では、関税その他が取り払われ、EU全体で産業分担がなされ、各国が相互優遇的に対応されています。このような仕組みを持つEUからギリシャが抜けて、経済的に生きて行けると考える人は少ないのではないでしょうか。