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保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方

投信商品の基準価格の不思議

保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]
【第37回】 2009年10月27日
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 先般、ザイ・オンラインのコラムにて、毎月分配型投信の商品性について改めて考えるコラムを書いたが、それは大学院での行動ファイナンスのクラスでのディスカッションを受けたものであった。今回はそのディスカッションの続きとなるが、投信商品における基準価格に関してである。

 投信では基準価格というものが設定され、通常は1口1万円で販売開始される。これが運用されるに従って、そのパフォーマンスに応じて基準価格は上下する。よいパフォーマンスのものは基準価格が上がり、悪いパフォーマンスだと下がる。

投信では次々と新商品が登場

 日本には3000ほどもの投信商品が存在するらしいが、3000もの中から自分に最適な商品を選択するのは大変である。また、運用側もそれほど多くの商品を管理するのも手間がかかる。できれば、ある程度の商品数に絞ったほうが投資家にとっても、運用側にとってもいいと思うのだが、商品提供側がひたすら新商品を提供し続けた結果、今のように商品数が膨大になった。

 では、なぜ新商品を提供し続けるのか。それは、基準価格1万円の投信商品が最も売りやすいから、というのが答えのようだ。「1口1万円で目安となる利回りが2%」と言われると、個人投資家はそれに自分が投資する金額を掛け算すれば年間どれぐらいの利益が出そうか予測できる。たとえば、50万円投資すれば1万円の利益が出る、というようにである。その際、基準価格の変動はあまり考慮しない。実際には、基準価格の変動が発生し、それによって途中で売買した場合のトータルのリターンは異なるが、投信の場合は、株式のように将来の価格の予測をしてくれるアナリストに頼ることもできず、どうしても当初の期待リターンは基準価格を一定のもとで考えることとなる。

基準価格1万円が売りやすい、買いやすい

 これは逆にいえば、基準価格が1万円ではない投信商品は買いにくいことも意味する。世の中にたくさん基準価格1万円の投信商品が提供される中、あえて1万円ではないものを買う必要性は薄いということだ。1万円を超えるものならパフォーマンスがいい商品なので良さそうなものだが、むしろ割高に映ってしまうらしい。ひとたび運用を開始すれば基準価格は1万円から乖離するため、新たに顧客に投信商品を提供するためには既存のものに勧誘するのではなく、結局また投信商品を組成する必要が出てくる。そして、結果として3000もの投信商品が存在することになった。

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保田隆明 [神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師]

1974年生まれ。神戸大学大学院経営学研究科准教授、昭和女子大学非常勤講師。リーマン・ブラザーズ証券(東京/ニューヨーク)、UBS証券東京支店で投資銀行業務に携わる。その後、起業、投資ファンド運用等を経て、10年より小樽商科大学大学院准教授、14年より昭和女子大学准教授、2015年9月より現職。雑誌、テレビや講演で金融・経済をわかりやすく解説する。著書は「あわせて学ぶ会計&ファイナンス入門講座」「実況LIVE 企業ファイナンス入門講座」(ともにダイヤモンド社)ほか多数。早大院商学研究科博士後期課程満期退学。
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保田隆明 大学院発! 経済・金融ニュースの読み方

仕事と両立しながら大学院に通い始めた保田隆明が、大学院で学ぶからこそ見えてきた新しい視点で、世の中の「経済・金融ニュース」をわかりやすく解説する。

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