【相続トラブル最前線】「うちも財産をもらわないと!」家族の合意を壊す“あの妻のひと言”
相続は誰にでも起こりうること。でも、いざ身内が亡くなると、なにから手をつけていいかわからず、慌ててしまいます。さらに、相続をきっかけに、仲が良かったはずの肉親と争いに発展してしまうことも……。そんなことにならにならないように、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)の著者で相続の相談実績4000件超の税理士が、身近な人が亡くなった後に訪れる相続のあらゆるゴチャゴチャの解決法を、手取り足取りわかりやすく解説します。
本書は、著者(相続専門税理士)、ライター(相続税担当の元国税専門官)、編集者(相続のド素人)の3者による対話形式なので、スラスラ読めて、どんどん分かる! 【親は】子に迷惑をかけたくなければ読んでみてください。【子どもは】親が元気なうちに読んでみてください。本書で紹介する5つのポイントを押さえておけば、相続は10割解決します。
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。

なぜ話がまとまりかけたときに限って
“妻”が口を出すのか? 感情爆発の相続劇

モメる家庭の共通点は「相続人の妻」
私はこれまで数多くの遺産分割を目にしてきましたが、モメる家庭に共通しているのは、「相続人の妻」が口を出してくるケースです。
女性が相続人で夫が口を出してくることもありますが、多くの場合は男性の相続人の妻がトラブルの火種になります。女性が家計を握っていることが多く、お金に関してシビアなのです。
妻のひと言でまとまった話が振り出しに
たとえば、親子で遺産分割協議の話し合いが済み、「お父さんの財産は、お母さんが全部もらってよ」という形でまとまりそうだったのに、あとから相続人の妻が「うちも財産をもらわないと!」と首を突っ込んできて、振り出しに戻るといったことは少なくありません。
法律上、相続人の配偶者は、遺産分割協議に口を出す権利はないのですが、実際には影響が及びます。そのため私は、そのような配偶者たちを“間接的な相続人”と捉えています。
特にやっかいなのは「次男の妻」
なかでも遺産争いがシビアになりやすいのが、次男の妻が口を出してくるパターンです。
今でも地方の多くでは、「両親のめんどうを見るのは長男の家族」という不文律があり、その代わりに実家の土地・家屋などを長男が相続するのが一般的です。
そうすると、次男の妻が、「お義兄さんのところは実家をもらうのだから、うちはお金を多くもらいたい」と主張してくるのですが、長男側は家を継いで舅や姑の世話をしてきているので、「うちが多くもらえて当然」という考えで譲りません。
気弱な次男と気の強い妻のケース
私が実際に経験したケースでは、次男が気弱なタイプだったのですが、その妻がかなり気の強い人でした。
相続人同士の話し合いはスムーズに進み、お母さん、長男、次男で意見がまとまっていたのに、あとから私の事務所に次男の妻から電話が入り、「あんた、何を吹き込んでいるのよ!」と怒鳴りつけられたのです。
結局その件では、次男が遺産分割協議書にハンコを押さず、話し合いが決裂してしまったのですが、お母さんがとても悲しんでいたのを覚えています。「前田先生、こんなことになって申し訳ないね」と謝られて、なんともいたたまれない気持ちになりました。
「通帳を投げつける」ほどの修羅場に
このほかにも、遺産分割の話し合いのときに、財産目録に載っている預貯金の額が少ないことから同居している親族が疑われたこともありました。
「お母さんの生活費として使った」と説明したものの不穏な空気になり、「それなら通帳を確認すればいいじゃないか!」と同居している親族が、同居していない親族に対して預金通帳を投げつけたのです。
相続で爆発する「積年の感情」
このように相続に直面すると、普段は平穏な間柄でも、本気のケンカに発展してしまうこともあります。それまで仲が悪かったわけではないのに、相続に直面すると、ため込んできた気持ちが爆発してしまうのです。
「お兄ちゃんは私立大に行かせてもらった」「孫の小遣いをたくさんもらっていた」「派手な結婚式をしてもらった」などと、昔話がいろいろと出てきて、話がこじれてしまいがちです。
「相続」は人生で数少ない“大金のチャンス”
日本人もかつてのように豊かではなく、将来的な不安も高まっていますから、みんなお金のことになると必死です。
人生でまとまったお金が入るタイミングは、普通は2回だけ。それは、退職時と相続時といわれます。だから相続のときは、「ここでお金をもらわないと」という気持ちが高まりがちです。
「公平」より「納得」が大切
だからこそ、私は相続では「公平」よりも「納得」を重視しています。相続に唯一絶対の答えはなく、お互いに譲り合い、落としどころを探るスタンスでいることが大事です。
法律のルールも大事ですが、それ以上に当事者の気持ちに配慮することで、致命的なトラブルを避けることができるはずです。
※本稿は、『相続のめんどくさいが全部なくなる本』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。