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佐藤可士和の打ち合わせ
【第5回】 2015年8月7日
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佐藤可士和 [アートディレクター]

一度打ち合わせをすれば、
仕事のレベルはすぐにバレる

打ち合わせはあまりにも身近で、そこかしこの企業で行われてきました。日本を代表するアートディレクター・クリエイティブディレクターである佐藤可士和氏も、その多忙な生活の多くを打ち合わせで費やしています。そして、たくさんの打ち合わせの経験からいかにそれが大切なものか『佐藤可士和の打ち合わせ』(ダイヤモンド社)で述べています。
打ち合わせは、いったいどのように振る舞い・どんな意気込みで臨むと実りが多いものとなるのでしょうか――

毎秒毎秒が
あなた自身の「プレゼンテーション」

 たくさんの打ち合わせをしてきて、ひとつ間違いなく言えることがあります。
 それは、一度打ち合わせをすれば、相手の仕事のレベルはすぐにわかってしまう、ということです。仕事の能力が、打ち合わせですぐに出てしまう。これは僕に限らず、多くの人が同じような印象を持っているのではないでしょうか。

 逆にいえば、相手からそんなふうに感じ取られてしまう場でもある、ということをしっかり認識しておかなければいけません。打ち合わせひとつで、相手に思いも寄らないような印象、ともすれば持って欲しくない印象を与えてしまうことすらあるのです。
打ち合わせは、すべてが「あなた自身のプレゼンテーションの場」です。

 最近では、打ち合わせにノートパソコンを持ち込む人が増えています。打ち合わせの議事録を作っておくことも大事なことではあります。しかし、これは議事録担当を一人作っておけば、済んでしまう話。

打ち合わせは、ただ「聞く場」ではないのです。「考える場」であり、「しゃべる場」です。やたらとメモばかり取っていては、考えることができません。ましてや、しゃべることもできない。これでは、打ち合わせに参加していることにはなりません

 みんなでしゃべることによって、何かが作り上げられる。黙っていては、何も生み出すことはできないのです。そして、しゃべらないことは、打ち合わせの意味を理解していない人、と見なされます。
 サッカーでいえば「試合に出ているのに一度もボールに触らない人」でしょう。ボクシングであれば「一度もパンチを出さなかった人」。打ち合わせに来ているのに、しゃべらない人、しゃべろうとしない人は、いる意味のない人だと言っても過言ではありません。
 何かを発言して、みんなで作り上げることに貢献する。僕自身、若い頃は、絶対何かひとつアイデアを言おうと思っていました。そうでなければ、存在感がまるで示せないからです。

 黙っている人は、本人にその気がなかったとしても、打ち合わせの場に「負のオーラ」を漂わせてしまうのです。いわば「黙るというパワー」が出てしまっている。その見えないパワーは、しゃべろうとする人の気持ちを削いでしまうのです。
しゃべっている側は、何か反応してほしいのです。反対でも共感でもかまわない。ところが、黙っているから反応がわからず、相手は不安になっていく。これが、しゃべるパワーを邪魔します。

 しかしながら、しゃべらない人がゾロゾロと加わってくる打ち合わせが、実は少なくありません。とにかく大勢で参加することが対応に力を入れている証、という思いこみもまだまだ残っているのかもしれません。

 僕自身は、そういう打ち合わせにしたくないので、しゃべらない人が入らない打ち合わせを事前にお願いすることもあります。そのくらい「しゃべらない負のオーラ」は大きいのです。

<POINT>
打ち合わせポイント(8) 打ち合わせで仕事のレベルはバレる
打ち合わせポイント(9) 不要なパソコンは持ち込まない
打ち合わせポイント(10) 打ち合わせでは、かならずしゃべる

本音でやりとりしなければ
意味がない

 僕は仕事がら、経営者などと、一対一の打ち合わせをお願いすることがよくあります。ところがそういうとき、他の社員の同席を求められることも少なくありません。
 相手先の会社としては、できるだけ経営者をフォローできる環境を作っておきたいのでしょう。しかし、録音してもらってもいいので一対一でお願いしたい、と依頼します。それは、「本音を聞きたいから」です。

佐藤可士和(さとうかしわ)
博報堂を経て「SAMURAI」設立。主な仕事に国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブン・ジャパン、今治タオルのブランドクリエイティブディレクション、「カップヌードルミュージアム」「ふじようちえん」のトータルプロデュースなど。毎日デザイン賞、東京ADCグランプリほか多数受賞。慶応義塾大学特別招聘教授、多摩美術大学客員教授。著書にベストセラー『佐藤可士和の超整理術』(日経ビジネス人文庫)他。

 打ち合わせは、アウトプットの場だと言いました。いいアウトプットをするためには、質の高い十分な情報を得なければなりません

  ところが、質の低い情報、つまり、タテマエで物事が進みがちなのが、ビジネスの世界の怖いところです。タテマエやキレイゴトが前提では、いいアウトプットなどできません。そもそもタテマエで動くお客さん、消費者はいない。だからこそ、打ち合わせで強く意識しなければいけないのは、どれだけ「ぶっちゃけ」られるか。これを、打ち合わせに参加する全員がしっかり認識していないといけないのです。

 これは外部との打ち合わせに限りません。社内でも、立場を気にせずに発言できるような環境が作れるか
 上司に気を遣って、部下が言いたいことに口をつぐんでしまったり、部下の発言に対して上司が不機嫌になったり。あるいは、別の部署の人間がしゃべったことに腹を立てたり、わかっていないくせに、という対応をしたり。こういうことでは、本当の情報やアイデアは出てこないのです。

 僕が以前勤めていた博報堂時代からお付き合いさせていただいている本田技研工業には、打ち合わせに関して有名な言葉があります。それが「ワイガヤ」です。
 ワイワイガヤガヤ部署も上下も関係なく、打ち合わせの場で、みんなで好き勝手に言いたいことを言い合う。このワイガヤ精神が、新しいイノベーションを生み出してきた、といわれています。

 本田技研工業は今も、このワイガヤをとても大切にしています。そうした精神がなければ、新しいものはできないということを、よくわかっているのでしょう。
 社内の垣根を取り払い、タテマエを捨て去り、本音で語る。打ち合わせから、いいアウトプットに結びつけていくために、これはとても重要なことなのです。

 次回は、思考を整理するための打ち合わせ術と、もしもネガティブな発言をするならばどんな風に話をしたらよいのかという点を解説していきます。

<POINT>
打ち合わせポイント(11)消費者、お客さんは本音で動く
打ち合わせポイント(12)社外でも、社内でも本音で「ぶっちゃけ」る環境づくりが大切

 

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佐藤可士和(さとうかしわ) [アートディレクター]

博報堂を経て「SAMURAI」設立。主な仕事に国立新美術館のシンボルマークデザイン、ユニクロ、楽天グループ、セブン-イレブン・ジャパン、今治タオルのブランドクリエイティブディレクション、「カップヌードルミュージアム」「ふじようちえん」のトータルプロデュースなど。毎日デザイン賞、東京ADCグランプリほか多数受賞。慶応義塾大学特別招聘教授、多摩美術大学客員教授。著書にベストセラー『佐藤可士和の超整理術』(日経ビジネス人文庫)他。


佐藤可士和の打ち合わせ

 打ち合わせはあまりにも身近で、これまで何の課題ももたれずに、そこかしこの企業で行われてきました。日本を代表するアートディレクター・クリエイティブディレクターである佐藤可士和氏も、その多忙な生活の多くを打ち合わせで費やしてきました。その中で、いかに効果的に打ち合わせをするかが、仕事の肝だと考えるようになったといいます。  拙著「佐藤可士和の打ち合わせ」(ダイヤモンド社)には、その打ち合わせ術が存分に盛り込まれています。今回の連載では、そのエッセンスをお伝えしていきます。  打ち合わせを制する者は仕事を制する! あなたも是非打ち合わせマスターになってください。

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