長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉
【第17回】 2015年8月12日 樋口直哉 [小説家・料理人]

男性長寿世界一・木村次郎右衛門さんは何を食べていたか

「問題 現在の最新である2014年の統計によれば日本の100歳以上長寿者に占める女性の割合は次のうち何%でしょうか。A 67% B 77% C 87%」

 先日、クイズ番組で。こんな問題が出題されていた。答えは「C 87%」。長生きするのは圧倒的に女性なのである。生活習慣や生物学的な差と見られているが、女は強く、男は弱い。人生の真理である。

 もちろん、男性にも長寿者はいる。木村次郎右衛門、1897(明治30)年生まれ。2013年に満116歳で亡くなったが、男性史上、最も長生きした人物である。生まれたのは19世紀、15歳で明治が終わり、終戦を経験したのが48歳の時、と考えれば激動の時代を過ごしたことがよくわかる。その生活は毎日午前5時半に起床し、午後8時に就寝するという規則正しいものだったそうで、郵便局に勤めた後、90歳頃までは農業に従事していた。できるだけ長く仕事を続けることも長寿の心得のようだ。

 モットーは「食べ物に好き嫌いはない。食細くして命永かれ」。

イラスト/びごーじょうじ

 実は木村次郎右衛門が生涯を過ごした京都府京丹後市は長寿者の多い地域。市は『「京丹後」百寿人生のレシピ』まで作成している。地元の食材や、豆を摂取すること、ゴマや海藻を食べることなどが、長寿の理由だという。ある新聞記事の中で木村次郎右衛門の主治医安原正博さんは「親や祖父母と同居し、互いに支え合う身内のつながりの深さも丹後地域に長寿者が多い理由」と語っている。

 それに加えて木村次郎右衛門は朝にヨーグルト、夜には牛乳を飲むことを習慣にしていたという。最近、カルシウムが不足しがちな和食に乳製品を取り入れた和乳食という言葉があるが、彼の食生活はまさにこれを実践したものだったといえる。最近、乳製品はなぜか批判されることが多く、インターネットで「牛乳 体に悪い」で検索すると否定的な意見が出てくる。一例を挙げれば乳製品にはリンが多く含まれているので体内に吸収されない、というもの。しかし、牛乳のリンとカルシウム比率は1:1と吸収には理想的で心配することはない。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉

1日でも長く生きたい――。きっと多くの人が望むことだろう。では、実際に長生きをした人たちは何を食べてきたのか。それを知ることは、私たちが長く健康に生きるためのヒントになるはずだ。この連載では、歴史に名を残す長寿の人々の食事を紹介。「長寿の食卓」から、長寿の秘訣を探る。

「長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉」

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