ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

「みんな、早く離婚してしまえ!」
結婚できないアラフォー課長の逆恨み日記(下)

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第28回】 2015年8月18日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

>>(上)より続く

 いまどき「寿退職」? 結構な身分だな……。面接の時点で、戦力になる前に辞めてしまうとわかっているのに内定を出し、雇い入れる。案の定、彼女たちは数年以内にあっさりといなくなる。そのしわ寄せを、自分たちが引き受ける……。

 村田は、こんな不満をいつも胸に秘めていた。ストレスが溜まるばかりで、結婚話を聞くたびに、もう、こんな会社を辞めようとさえ思う。

 お見合いは週末が多い。ここ1年は、それをキャンセルし、20代の女性社員たちがやり残した仕事をする機会が増えている。当然休日出勤になるが、その分の賃金は支給されない。時折、学生時代の友人に愚痴をこぼす。そんなとき、憧れだった小田加奈子のことを聞くと、たまらなく空しくなる。

「みんな早く離婚してしまえ」
そして周囲に誰もいなくなった

 村田は今、転職活動をしている。今ならば、「若き課長」として労働市場で売れると考えたからだ。ただし大きな理由は、実は他にある。

 自分が知らないところで、営業部の河口という20代後半の女性が、結婚式を挙げたらしい。さすがにバカバカしくなったのだ。村田には一切、知らされていなかった。部長以下、十数人が参加した。その中には、村田の部下である非管理職たちも多数いる。

 なぜ、課長である俺を呼ばない? あれほどに仕事で尻拭いをしてあげているのに……。残業代ももらえず、無償の行為をしているのに、こんなことを水面下でやっているなんて……。

 村田には、河口のこともフォローしてきた自負があった。お世辞にも優秀とは言えない女性だった。むしろ、足手まといと思ったほどだ。それでも、仕事を手伝っていた。

 なめやがって……あいつ……。

 怒りが次第に強くなる。最近は、河口のフォローはしないようにしている。そうしているうちに、村田の腹に秘めた怒りやコンプレックスを感じ取ったからだろうか、いつしか20代の女性社員が周囲に近寄らなくなった。一方で、早々と数年以内に離婚する女性がいると、うれしさのあまり、誰もいないトイレでほくそ笑む。そして祈る。

 早く、河口も離婚しろ……!

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

⇒バックナンバー一覧