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China Report 中国は今

消費しない若者「エビ族」が出現
物価上昇で節約に走る上海消費市場

姫田小夏 [ジャーナリスト]
【第48回】 2010年4月1日
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 「節約してる?」――これが“エビ族”の合い言葉。エビ族とは、金融危機以降、収入の落ち込みと不動産高を背景にして中国都市部に出現した“消費しない若者”たちを指す。

 なぜエビ族なのか。中国語で「虫下米」(※虫へんに下で一字)とは網をすり抜けてしまうほどの小エビのこと。小さいパンに7匹のエビがぎっしり詰まるエビバーガー(「至珍七虫+下堡」)は、肯徳基ことKFCが昨秋発売したものだが、小さい住まいに蟄居する様子を、エビの住む小さい巣穴に喩えたところからこの流行語が生まれた。

KFCが昨秋発売したエビエビバーガーは「エビ族」の流行語を受けて定番化した。

 急激な物価上昇にもかかわらず給料は上がらない、不動産もここまで上がったらもうお手上げ、かくなる上はもう諦めるしかない。上海の企業に勤務する多くの若手サラリーマンを支配しているのは、そんな諦めから生まれた「開き直りムード」だ。

 外資企業に勤務する若いカップルが昨年1LDKの新居を購入した。「買えたところでせいぜい1LDK。社員のほとんどが持ち家なので、買わないわけにはいきません」と話す。他方、「もう賃貸でいいです、これだけ値上がりしたらもう買えません」と諦める男性(29歳)もいる。

 身の丈大の生活を受け入れ始めた彼らの生活、その“ケチケチ生活のススメ”はメディアの特集にもなるほど。地元紙の申江服務導報は「2010年版のサラリーマン生活」と題し、「賃貸に住もう」「転職は控えろ」「出勤は自転車で」「(不動産価格の高い)上海からは脱出だ」など16ページにも及ぶ特集を組んだ。

 高層マンションの住人になり、家具をそろえ、クルマも買い――。そんな生活から打って変わって、節約・工夫を支持。これは過去を否定する180度転換した新潮流だ。

節約・割安へと変化する
上海の消費市場

 上海で長期的に消費市場を観察するコンサルタントのT氏は、「09年を前後して、消費市場も変化を見せつつあります」と指摘する。

 例えば、方正科技は40平米足らずの狭い部屋(ちなみに日本のワンルームマンションは平均20平米だが、上海では複数で40平米に住む可能性もある)に住むエビ族に向けて、邪魔にならずに置ける新しいパソコン(方正心逸Q200)を発売した。

 家具のIKEAはエントランスの正面に、17平米、25平米、36平米とタイプ別の小型リビングをショールームにして展開、まさに彼ら「エビ族」向けの売り場を全面に押し出している。テーブル349元(約4500円、以下1元=約13円)、ソファー1949元(約2万5000円)、壁面テレビ台2219元(約2万9000円)と割安感を重視した陳列だ。

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姫田小夏 [ジャーナリスト]

ひめだ・こなつ/中国情勢ジャーナリスト。東京都出身。97年から上海へ。翌年上海で日本語情報誌を創刊、日本企業の対中ビジネス動向を発信。2008年夏、同誌編集長を退任後、「ローアングルの中国・アジアビジネス最新情報」を提供する「アジアビズフォーラム」主宰に。語学留学を経て、上海財経大学公共経済管理学院に入学、土地資源管理を専攻。2014年卒業、公共管理修士。「上海の都市、ビジネス、ひと」の変遷を追い続け、日中を往復しつつ執筆、講演活動を行う。著書に『中国で勝てる中小企業の人材戦略』(テン・ブックス)、共著に『バングラデシュ成長企業 バングラデシュ企業と経営者の素顔』(カナリアコミュニケーションズ)。

 


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90年代より20年弱、中国最新事情と日中ビネス最前線について上海を中心に定点観測。日本企業の対中ビジネスに有益なインサイト情報を、提供し続けてきたジャーナリストによるコラム。「チャイナ・プラス・ワン」ではバングラデシュの動向をウォッチしている。

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