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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

仕事がヒマ過ぎて、もう死にそう!
人材育成の真空職場で悶絶する新人たち

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第31回】 2015年9月8日
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「入社以来、ヒマでヒマで……」が口癖の新卒社員が入社3年目にして思い切ってとった行動とは?

 アベノミクスの追い風もあり、ここ数年、好景気が続いている。大企業を中心に、新卒・中途の採用意欲は旺盛だ。しかし、多くの中小・ベンチャー企業では、採用やその後の定着・育成についてトラブルが絶えない。

 もともと中小企業は、新卒採用より中途採用に重きをおいてきただけに、急遽新卒採用をしようとしたところで、なかなかうまくはいかない。ましてや、採用した後の定着や育成となると、そのノウハウがまるでない場合もある。

 今回は、入社後2年近くにわたり、会社でまともな仕事が与えられなかった男性社員を紹介しよう。信じられないようだが、彼が今春から夏にかけて数回に分けて筆者に語ってくれたものだ。この男性の行動には、賛否両論があるかもしれない。必ずしもほめられる行動をとっているとは言えないが、なぜこんな状況になってしまったのか。

 あなたの職場にも、このような社員や管理職がいないだろうか、一緒に考えてみてほしい。


「入社以来、ヒマでヒマで……」
仕事がなくて悶絶する広告マン

 「ヒマで、ヒマで……。1年近くの間、することがないんです」

 「仕事がないの?」

 「朝、出社してもすることがない。だから、『都庁でリサーチをしてきます』と言って席を離れます。そのまま、新宿のあの周辺を歩くだけ……」

 「上司は、何も言わないの?」

 「何かを言いたい感じだけど……。ものすごく忙しいみたいです。部長だけど、社長から滅茶苦茶怒られている。仕事を大量に抱え込んで、息苦しい感じ」

 「ならば、あなたは部長を支えないと……」

 「仕事をさせてほしい、と言うんだけど……。僕は何もできないから……。そんな事務所にいるのが、嫌だから……」

 新宿駅付近の喫茶店で、堂本(23歳)が取引先の広告制作プロダクションに勤務する吉池(46歳)に、この1年間のことを打ち明けていた。183センチの長身で、長い背中をぐいっと曲げて前かがみになり、話し込む。

 堂本は、有名私立大学の教育学部を卒業し、広告代理店に入った。1年在籍しただけだが、今や「ヒマで、ヒマで……」が口ぐせとなっている。一応は広告マン。だが入社以来、担当する大きな仕事がない。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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