『フォーブス』誌発行人を務め、連続起業家でもあるリッチ・カールガードは「成功し続ける企業」の5つの条件を、ウォール街からシリコンバレーまで全米企業への徹底取材から明らかにした。本連載は『グレートカンパニー――優れた経営者が数字よりも大切にしている5つの条件』からそのエッセンスを紹介する。第5回は、一般的な「知性」とビジネスにおける「知性」の違いがテーマだ。

「知能」はビジネスに必要ない?

知性が豊かである」という言葉を使うとき、私たちはたいてい知能のことを述べている。
 知能とは、一般的には──かいつまんで言うと──、知力に関する一般能力のことであり、論理的に考える計画を立てる問題を解決する抽象的に考える即座に理解するといった能力が含まれる。

「仕事ができる」と「勉強ができる」は違う?

 もっとはっきり言えば、この言葉は次のように大きく二つの要素に分けて説明することができる。

・新しいことを学んだり初めてぶつかった問題を解決したりする能力──これを流動性知能と呼ぶ。
・学んだ結果を応用する能力──これを結晶性知能と呼ぶ。

 学習と思考と応用という総合的な能力は、一般知能(しばしばgと表記される)として認識されている。一世紀と少し前には、私たちは生まれたときにすでに自分の知能、すなわちgが決められていて、大きく変えることはできない、と多くの人が信じていた

 個人によって異なるgは心理テスト、ふつうはIQテストによって測定される。論理的思考や処理速度や記憶力、空間認識能力といった認知領域を網羅するテストである。
 これらの領域はそれぞれ独立していると思われていることがあるが、多くの研究により、そうではないことが明らかになっている。つまり、ある分野で優れている人は、他の分野でも優れている場合が多いのである。

 しかし、「知性」の測定に関して言えば、最も重要なのはgではない。
 発達心理学者でハーバードの教授でもあるハワード・ガードナーは一九八三年に「多重知性(MI)」という理論的枠組みを導入した。もう一つの理論的枠組みである「心の知性(EI)」は、科学に関するコラムを『ニューヨーク・タイムズ』に書いていた心理学者のダニエル・ゴールマンによって、一九九五年に広められた。

 どちらの理論も、gによって定義されるような唯一無二の知能というものはなく、知能とはさまざまな側面を持ち、幾重にも重なったものである、と述べている。三つのアプローチ(g、MI、EI)のいずれもきちんと筋が通っており素晴らしい点もいろいろあるが、ここできわめて重要なことを言っておこう。突きつめて言えば、こういうことだ。

三つのアプローチはどれも重要ではない