地価に上昇傾向が見え始める一方、建設費高騰や東京オリンピック後の反動減などのリスクも懸念される。今後の見通しを聞いた。

もり・あきら/1936年京都府生まれ。60年慶応義塾大学経済学部卒業後、安田信託銀行(現みずほ信託銀行)入行。72年に森ビル入社、79年同社常務、87年森ビル観光(現森観光トラスト)社長、93年森ビル開発(現森トラスト)社長。森ビル創業者である森泰吉郎氏の三男であり、森ビル元会長の故・森稔氏は実兄にあたる。
Photo by Kazutoshi Sumitomo

――不動産市況の見通しは。

 人口の集積度が高い大都市の地価は上がっているが、全体としては今も縮小傾向にあります。今後、少子高齢化とともに大都市とそれ以外の地域との差はさらに拡大していくでしょう。

 地方については、道州制を導入して地域としての特徴を持たせるなどの取り組みがなければ、益々厳しい状況に陥ると思います。

 東京オリンピックの開催が決まったことで、特に東京の一人勝ちが加速するでしょう。実際、インフラなどの建設需要が増え、足元は景況感が出てきています。

 だが、東京オリンピックはいわば“臨時ボーナス”のようなもの。2020年までに雇用、医療、農業などの岩盤規制をぶち壊すことができなければ、その後の日本経済は急落し、不動産業界も一気に厳しくなるでしょう。

 不動産市況のみならず、日本経済の行く末にとって、来年が分岐点になると思います。

 国は約41兆円の新規国債を発行し、その内、建設国債を除く赤字国債は約35兆円に上ります。赤字国債が積みあがる一方で、少子高齢化により労働人口は減少。それゆえに、現政権は早急に、医療、農業、雇用などの岩盤規制にドリルで穴をあけなければならないのですが、足元では集団的自衛権の議論ばかりが目立っています。