創続総合研究所

相続人の配偶者は、損得勘定で動く!?
~連れ合いの親が亡くなり相続に。あなたは何を考えますか?

八木 そんな話を夫にされて、娘さんの心も、だんだんそちらに傾いたんでしょうね。協議の場では、彼女は何とおっしゃっていたのですか?

村越 「私にはよく分からないので、夫に任せています」と。こちらが、いくら旦那さんに「あなたは部外者でしょう」と主張したくても、相続人にそう言われてしまうと……。
 でも、さっきも言ったように、彼の言っているのは、あくまでも税金の「損得」のお話なんです。そこには、「親子の情」というファクターが、完全に抜け落ちている。

八木 結局、どんな決着になったのでしょう?

村越 最後はお母さんが折れて、「妻の夫」の提案に近い形でまとまりました。まあ、「法定相続分」が権利なのは確かですから、それを強硬に主張されたら仕方がない、ということです。
 でも、お母さんは、不安と不満でいっぱい。まさに、人生の最後に、ひとり娘に裏切られた気持ちになったのではないでしょうか。そんな姿を見て、娘さんのほうも「本当にこれでよかったのか」という顔をなさっていました。

「口も顔も出さない」が原則

八木 ただ、今のケースは親ひとり子ひとりで、関係する配偶者もひとりだったから、まだシンプルな諍いだった、ともいえると思うんですよ。実際には、兄弟たちそれぞれの配偶者が口を出して、収拾がつかなくなるようなケースも珍しくありません。あらためて、「相続人の配偶者」としての心構えをアドバイスするとしたら?

村越 中には、あまりにも理不尽な相続なのに何も言えないような相続人の代わりに、その配偶者が戦って正当な権利を確保することができた、なんていう例もあることはあります。ですから、「パートナーの相続には、どんな場合にも見てみぬふりをしろ」とは言いません。しかし、「自分は相続人ではないんだ」という自覚はしっかり持ってほしいんですよ。関われるとしたら、今述べたような、客観的にみて「明らかにおかしい」といえるケースであって、原則として相続人に意見したり、ましてや遺産分割協議に出ていくなどの行為は慎むべきです。

八木 相続って、ただでさえ相続人の思惑や感情が絡むナイーブな場ですからね。そこに「他人」である配偶者が絡んでプラスになることは、あまりないですよね。

村越 あと、心がけてほしいのはコミュニケーションです。年に一度は、親のところに兄弟姉妹がその配偶者も連れて集まって、飲んだり話したりするとか。そういう場で、お互いを見知っていれば、「いざ相続」という時に、気持ちの面でもずいぶん違うのではないかと思うのです。

八木 少なくとも、「遠慮なくものを言う」ことは、しにくくなるかも。それ、大事だと感じます。

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八木美代子 [株式会社ビスカス代表取締役]

早稲田大学卒業後、リクルート入社。1995年に株式会社ビスカスを設立。税理士を無料でご紹介するビジネスモデルを日本で初めて立ち上げ、現在まで10万件以上のマッチングを実現。相続に強い税理士のみを集めたサイト「相続財産センター」を運営し、相続コーディネーターとしても業界ナンバーワンの実績を誇る。著書に『相続の現場55例』(ダイヤモンド社)、『相続、いくらかかる?』(日経BP社)、『相続は『感情のもつれ』を解決すればお金の問題もうまくいく』(サンマーク出版)などがある。
株式会社ビスカス

 


相続の現場~争いから学ぶハッピー相続術

相続の別名は、「争続」。仲の良かった兄弟姉妹が親の遺産を前に骨肉の争いを演じるというのは小説やテレビドラマの中だけの出来事ではないようです。諍いの中心はもちろん「お金」。ですが兄弟姉妹には、他人がうかがい知ることのできない「本音」「思い」があるようで……奥底にある「心の綾」を解きほぐすと争いから一転、分かりあえるのが家族。そうした「ハッピー相続」の例を解説します。

「相続の現場~争いから学ぶハッピー相続術」

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