最近、アラブ首長国連邦のアブダビ投資庁を訪問した大手投資顧問の幹部は、苦笑せざるを得なかった。「日本の成長率は低くても、個別銘柄には株主価値を増やしている会社もある」と説明したところ、「そんなに魅力があるなら、どうして日本人が買わないんだ」と質問されたという。
例えば、株式投信。この3月の株式投信は、5825億円の資金流入超過となり、純資産は4兆1053億円増えて、52兆5775億円になった。ところがである。その内訳を見ると、増えたのはバランス型やファンドオブファンズが中心で、国内株式型は550億円の資金流出。株価の上昇で純資産こそ増えたものの、純資産総額は3月末で3兆4630億円しかない。ちなみに東京証券取引所の時価総額は、約330兆円ほどだから、株式投信のウエイトたるや豆粒のようなものだ。
株式投資を呼び込むには、なんと言っても成長性が高くなくてはいけない。日本は経済全体どころか、個々の企業レベルでも、世界の投資家からそっぽを向かれている。いや、株式投信で分かるように、日本の投資家自身が成長性については、懐疑的なのだ。
金融危機経ても米国の株価は9倍を維持
日本はどうしてこんなにも、魅力のない国になってしまったのか。新年度に入って、前09年度の統計数字が次々と発表されているが、景気の2番底懸念が遠のいて、すっかり弛緩してしまった政治や実業界の姿勢とは裏腹に、それは「瀬戸際日本」の姿を示すものばかりだ。海外から見て、日本が瀬戸際に立っていると判断される要因は、①安全保障、②財政問題、③株価である。
安全保障は、言わずと知れた沖縄・普天間基地の移転問題。政府が5月末までに出すはずの結論によって、米国との同盟関係にどのような影響を及ぼすかが懸念されている。
財政も周知のように2010年度予算では、歳入見込み92兆2992億円のうち、税収は37兆3960億円なのに対して、公債(国債)発行による収入が44兆3030億円と、実質的には、戦後初めて国債による収入が税収を上回った。収入のほぼ半分を借金に頼る「火の車財政」だ。
つれて、借金の額も積み上がり、国と地方を合わせた長期債務残高は、10年度末には37兆円増えて862兆円に達すると予想されている。単純に言えば、来年度から国と地方政府が超緊縮・大増税を実施して、10兆円の黒字を実現しても、借金返済にはおおよそ90年かかる。もはや遥かなる末代まで、借金の重荷を背負わせてしまったのである。