「これは、皮肉な“朗報”なのかもしれない」。ある東芝関係者は、政府のある動きについて思わず打ち明けた。
それは10月5日に、日仏政府が行った原子力分野の対話だ。これは仏原子力大手アレバが経営難に陥っていることから、仏政府が、アレバと新型原子炉で提携する三菱重工業に出資を求めたものだ。
三菱重工とアレバの両トップも参加した会合で、バルス仏首相は「日本の原子力産業が、資本面でフランスの原子力の再構築に参加してほしい」と端的に語った。
三菱重工は今後、アレバ本体への出資も含め、具体的な検討を迫られることになる。
この動きが、なぜ東芝にとって意味を持つのだろうか。
東芝は2006年、米原子力大手のウェスチングハウス(WH)を約42億ドル(当時のレートで約4800億円)で買収した。
WHは、アレバのような経営難は表面化していないが、福島第1原発事故後の事業環境悪化で窮地にあるのは同じ。巨額をつぎ込んだ東芝にとっては、のれん減損という大きなリスクが常に付きまとう事態となっている。
東芝は現状、WHの減損回避を徹底しているが、原子力事業のリスクは認識しており、室町正志社長も「パートナー戦略も必要。日本政府の考えも確認しながら、いろんなかたちの枠組みを考える必要がある」と述べている。