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社長! 御社は銀行からまだまだおカネを借りられますよ!
【第5回】 2015年10月13日
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村上浩

おカネが借りやすくなる「融資の5原則」
中小企業のための銀行対策(5)

銀行との融資交渉に苦労した経験はありませんでしょうか。交渉を有利にすすめるには、何より「敵を知る」ことが重要です。
銀行員が何を考えているのか理解するためには、「融資の5原則」を知っておくとよいでしょう。元銀行マンで、現在は中小企業向けの再生コンサルタントをしている村上浩氏が解説します。

銀行員の思考を読んで
融資交渉を有利に進めよう

 金融機関が融資の是非を審査するときは「融資の5原則」、つまり「公共性」「成長性」「安全性」「収益性」「流動性」の原則をふまえて議論しています。金融機関の思考を意識すれば、融資交渉を有利に進めることができるかもしれません。知っておいて損はないでしょう。

 まずは(1)公共性の原則から。融資は、社会の発展に役立つものであるべきという原則です。公共性の高い企業が万が一経営破たんに陥れば、そのサービス提供がストップし、社会の発展を著しく阻害することになりかねません。この場合は「そのまま資金不足で経営破たんさせてよいのか」という議論が金融機関で必ずなされることになります。

 電力会社やガス供給会社、電鉄会社などは公共性が非常に高いと言えますね。電力会社が破たんすると、国民生活に多大な影響を及ぼすでしょう。それでは中小企業ではどうか。地方交通を支える路線バスを運営するバス会社や広域市町村単位で都市ガスを供給するガス会社は、文句なく公共性の高い業種です。病院や介護施設などの運営も、本来行政庁が行うべきサービスを民間が肩代わりしている側面もあるので、公共性が高いと言えます。

 わかりやすいインフラ業だけではなく、例えば土木建設業でも公共性が高いと判断できるケースもあります。どんな地方に行っても土木業者が1社か2社はあります。土砂災害などが発生した場合、速やかに道路や河川を修復するためには、重機・技術者を保有した土木業者が必要なのです。

 もし御社が、法人の少ない地方で電子機器の組立業を営み、パートさんを含めて100名余の従業員を雇用しているとしましょう。地元資本で100余名の雇用を受け容れている事業体はそう多くありません。家族も含めると300〜400人の生活が御社から支払われる給与で賄われている勘定になります。この地域雇用に限っては、非常に公共性の高い企業であるとこじつけられます。

銀行員の心に刺さる!
「公共性の原則」を意識したフレーズ例

 借り入れを申し出るにあたって、ぜひ公共性をアピールしてみてください。以下のようなフレーズが効果的です。きっと今までにない反応を示すことでしょう。

「非常時の出動に備えて、自治体からは夜間連絡網も配備されている。数十年に1回といわれる自然災害が毎年のように全国で発生している今、地域住民の命を守る役割を自治体から与えられて、身が引き締まる思いで経営にあたっている」

「大手企業の地方撤退が相次ぐ今、地元資本の私達は、海外進出はあっても、地元の拠点を失くすことはありえない。研究開発は国内で、組み立ては海外で行う流れになると思うが、地元の雇用は大事にしたい。従業員はパートも入れて100名あまり、家族を含めるとおよそ400名が弊社の経営を支えてくれている。その400人に対する責任も痛感しているので無責任なことはできない」

本業の調子が悪いなら
新規事業をアピールすべき

 次は(2)成長性の原則です。融資した資金が融資先の成長・発展に役立ち、さらに銀行自身の成長・発展に役立つものでなければならないという原則のこと。御社が新規融資を受けることで「どのように」「どれだけ」成長・発展するのかを、できるだけ具体的に説明できるかが、融資獲得のポイントになるでしょう。

 新規事業に果敢にチャレンジする企業は「成長性の原則」上好ましいと言えます。現在の本業が低成長に陥って収益力が見劣りしていても、新規事業の見通しが立つのであれば、成長性を前面に出して交渉の席に立つべきです。経営改善に向けて、新たな切り口から収益源を見つけ、その実現のために融資を乞う再生資金なども、広義の意味で、成長性に着目した融資といえるのかも知れません。

 3つ目は(3)安全性の原則融資した資金は、安全に運用され、確実に回収できるものでなければならないとする考え方です。銀行貸出金の原資は、もともとは預金者から預かった「預金」が大半。メガバンクにしたところで、運用資産の20%足らずしか自己資本を保有していません。80%以上は、個人や企業から預かる預金が原資です。

 他人様からの預り金を運用させてもらっているのだから、最終的には、預金者に「預り金」を返済する義務があります。よって、融資は過大なリスクにチャレンジすることなく、安全・確実な事業者を貴ぶのです。個別企業融資は、特定の業種に偏重せず、1社あたり融資限度を設定することによって、全体的な融資リスクをコントロールする仕組みを取り入れています。

中小企業向け融資は
どこの銀行も欲しがっている

 4つ目は(4)収益性の原則。金融機関は公共性が高いとは言っても、基本的には営利企業である株式会社の形態を取っています。安定した金融サービスを利用者に提供するうえでも、一定の収益は常に追求せざるを得ません

 銀行の収益源は、なんといっても融資のウェートが依然高いのです。収益性においては、利ザヤの低い大企業向け融資よりも、中小企業向け融資に注目が集まります。大企業融資はとにかく儲かりません。場合によっては逆ザヤになることもあります。中小企業取引は、一取引あたりの量は稼げませんが、逆に小取引・多数取引となり、案件ごとの利ザヤもある程度期待できることから、全国的に金融機関同士の競争が激しくなっています

 さらに優良な中小企業は数が少なく、運用先に困っている金融機関の間では、優良取引先を巡っての「融資肩代わり合戦」も一部に見られたりします。最近では企業支援に取り組み、貸倒引当金の極小化に取り組む銀行も見られます。

 最後は(5)流動性の原則。最近は普通銀行でも長期貸出金を積極的に取り扱っていますが、本来融資期間は、預金期間と合わせるべきなのです。そうでないと、銀行といえども「資金繰り」が問題になる、という考え方に基づく原則です。

 例えば、普通預金は預金者が「今日下ろす」といえば、銀行はそれに応じざるを得ません。しかし、その預金をベースとして貸し出していた融資期間が5年とか10年だったらどうでしょう。預金残高が数十兆円もあるから、一預金者の預金流失が「資金繰り問題」になることは現実的ではないかも知れません。ですが、融資期間は、預金期間に近いほうが金融機関にとってリスクが少ないのです。

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村上浩(むらかみ・ひろし)

株式会社リンクス代表取締役。
1985年大学卒業後、足利銀行に20年間勤務。17年間、複数の本支店で融資、債権回収業務に携わる。回収業務では、ゼネコンを中心にバブル期に大量に貸し付けた資金を回収した。
2002年、足利銀行がデフォルトを起こす直前、取引先の再生支援を目的に新設された「企業支援部」に配属、様々な再生手法を学ぶ。当時の栃木県は、企業再生件数が東京都に次ぐ(日本)国内2位であり、県内の地方銀行2行のうち1行、信用金庫10行のうち5行が国有化・統合された。そのような特殊な環境下で、中小企業の再生業務の経験を積む。
足利銀行デフォルト後も融資実務に携わるが、取引先再生支援の判断を機械的なスコアで決めることに違和感を覚える。貸出額10億円未満の中小・零細企業も事業再生の機会を与えられるべきだとし、企業支援部時代の同僚と、再生コンサルタント集団「リンクス」を2006年に創業。クライアントの半分が「破たん懸念先」か「実質破たん先」のどちらかという過酷な環境の中、200社以上のうち150社の再生に成功。産経新聞、日本経済新聞(栃木版)などメディア掲載多数。


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