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佐高 信の「一人一話」

サンダル履きが似合う女優 倍賞千恵子の実像

佐高 信 [評論家]
【第32回】 2015年10月26日
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 ♪どうせおいらはヤクザな兄貴
  わかっちゃいるんだ妹よ

 渥美清演ずる車寅次郎は「男はつらいよ」の3番をこう歌い出す。その妹さくらが倍賞千恵子である。たとえ妹がいなくても、それを彼女や母に置き換えて、世の男どもは次のように続ける。

 ♪いつかお前が喜ぶような
  偉い兄貴になりたくて

 もちろん、さくら以外にも倍賞の当たり役はあるのだが、何せロングランの超人気シリーズとあって、倍賞イコールさくらというイメージが定着している。

渥美さんは私のことを娘みたいに思ってくれていた

 そのさくら、いや倍賞と『俳句界』で対談したのは2014年の暮だった。

 話は渥美清の思い出から始まったが、倍賞はさくら役が少し重荷になっていて、一時休憩しないかなと思っていたころ、渥美に「役者が役名で呼ばれたら、それはほめ言葉なんだよ」と言われた。

 渥美は家庭を守るためか、友人をほとんど自宅に連れて行かなかった。浅草時代からの古いつきあいの関敬六でさえ、「お前はここで帰んな」と言われたのである。

 倍賞は、「寅さん」と騒がれれば騒がれるほどそうなっていったんだと思うと語っていたが、それだけに「さくら」に占領されてしまうと苦しんでいる倍賞を渥美は気遣っていたのだろう。

 対談する前、手紙の整理をしていたら、渥美夫人からもらった手紙が何通か出てきて、倍賞は読みながら、ぼろぼろ泣いてしまった。

 渥美が亡くなってからもなかなか会えず、柴又でコンサートをやった時に初めて夫人が楽屋に姿を見せ、黙って2人で抱き合って、ワーワー泣いた。開演前なのにである。その後の倍賞の言葉を引こう。

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佐高 信 [評論家]

さたか・まこと 1945年山形県酒田市生まれ。評論家、『週刊金曜日』編集委員。高校教師、経済雑誌の編集者を経て評論家に。「社畜」という言葉で日本の企業社会の病理を露わにし、会社・経営者批評で一つの分野を築く。経済評論にとどまらず、憲法、教育など現代日本のについて辛口の評論活動を続ける。著書に『保守の知恵』(岸井成格さんとの共著、毎日新聞社)、『飲水思源 メディアの仕掛人、徳間康快』(金曜日)など。


佐高 信の「一人一話」

歴史は人によってつくられる。ときに説明しがたい人間模様、ふとした人の心の機微が歴史を変える。経済、政治、法律、教育、文化と幅広い分野にわたって、評論活動を続けてきた佐高 信氏が、その交遊録から、歴史を彩った人々の知られざる一面に光をあてる。

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