株、為替、債券、商品、世界経済に潜む闇を白日の下にさらけ出し、明快かつ独特な視点で切り込む金融メルマガ『闇株新聞プレミアム』。今回は世界が固唾をのんで見守っている(でも誰も額面通りとは信じてはいない)中国の経済成長率について――。
李克強首相も信じていない? 国家統計局発表のGDP
中国国家統計局は10月19日、2015年7~9月期の実質GDPが前年同月比で6.9%増だったと発表しました。リーマンショック直後2009年1~3月期の6.2%以来の低成長であったということです。この期に及んで、計算期間終了後わずか20日足らずで発表される、あの広大な中国のGDPが正確と考える人は少ないはずですが、それにしても不思議な数字です。
例えば9月の輸入はドルベースで前年同月比20.4%(1~9月累計では15.3%)も減っています。輸入減そのものはGDPを押し上げますが、いくら原油など資源価格の下落があったとしても、これだけ輸入が減っている中で中国経済が未だ前年比7%近い成長を維持していると信じる人がいるでしょうか。
さらに言えば、このような状況にあるにもかかわらず、発表では消費が同10.5%も伸びているというのです。ますます信じられません。経済通で知られている李克強首相自身、かつて遼寧省党委書記を務めていた時代に「中国のGDP統計は"人為的"であり信頼できない。私は電力消費、鉄道貨物量および銀行融資の3つのデータだけに注目している」と述べたことがあったくらいです。
では、李克強首相が「比較的信用できる」らしい9月の発電量はと言うと前年比3.1%減、鉄道輸送量も同10%減となっています。何よりも9月の消費者物価指数は前年同月比1.6%の上昇でしかなく、卸売物価指数に至っては同5.9%の下落と43カ月連続でマイナスになっています。
計画型疑似資本主義の中国GDPは「計画値」
キリがないのでこの辺にしますが、やはり中国は資本主義国ではなく、共産党一党独裁の「計画経済」あるいは「計画型疑似資本主義」なのです。
中国国家統計局から発表されるGDPとは「実績」ではなく「計画」であり、そういう目で見ていくと2000年~2011年のGDPは「計画」では平均10%成長だったことになります。それが2012年以降に7%まで減速させており、現在もさらに減速させているわけでもなさそうです。2011年までも「実績」が9%台の年もあったからです。
2000年当時の中国の名目GDPは10兆元弱(当時の為替で1.2兆ドル=130兆円)だったので「背伸びした計画」であったとしても、世界経済への影響は限られていました。しかし、2014年の名目GDPは63.7兆元(現在の為替で10.3兆ドル=1200兆円!)にもなっているため、中国国家統計局の都合で勝手な計画がたてられると、その影響は世界経済全体に及びます。
中国経済の本当の規模や成長率は誰にも(当の中国国家統計局にも)わからず、最近はそもそも本当に成長しているのかも疑わしい、もしかしたらマイナス成長になっているのではないかとまで心配しなければならなくなっています。
世界経済にとって最大の恐怖は、その誰にもわからない中国経済の規模と成長率を前提に、世界中が過剰設備・過剰生産・過剰資源に陥ってしまっていることです。そして最も過剰状態となっているのが当の中国企業なのです。
闇株新聞が試算した中国の本当の経済規模は?
いったい中国経済の本当の規模はどれくらいで、発表されている規模とのギャップがどれくらいあるのでしょうか。本誌なりに推測してみることにします。
そもそも実態と発表のギャップが拡大し始めたきっかけは、リーマンショック直後の4兆元の経済対策でした。この効果を世界中が過剰期待したわけですが、その結果は中国全体に不採算投資・不良債権が積み上がっただけでした。
そこでIMFが集計するリーマンショック時(2008年)の名目GDP31.6兆元(当時の為替で4.6兆ドル)を正しい数字と仮定します。そして、同じくIMFが集計した2008年から2014年までの消費者物価上昇率を累計した1.16倍を基に計算してみます。
この間の実質成長率が毎年6%だったとすると2014年の名目GDPは52.0兆元、毎年5%だったとすると49.0兆元となります。とすると、ざっくりと考えて昨年(2014年)の中国の名目GDPは50兆元くらいと見るのが妥当ではないでしょうか。
ところが実際にIMFが発表している2014年の名目GDPは63.7兆元(現在の為替で10.3兆ドル=1200兆円!)もあります。そのギャップは実に13兆元強(現在の為替で2.1兆ドル=250兆円!)もあり、中国経済は日本の経済規模の半分くらいの「大粉飾」を抱えていることになります。
あくまで試算による見方の一つに過ぎませんが、中国経済の実情は「多少減速している」程度のシロモノではありません。ところが、同じような「大粉飾」が中国経済にはまだまだあるのです。さらにディープな闇をご覧になりたい方は『闇株新聞プレミアム』でお楽しみください。
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