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野口悠紀雄 未曾有の経済危機を読む

年金の「100年安心」演出が目的?
賃金上昇率2.5%、運用利回り4.1%の虚妄

野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]
【第69回】 2010年5月8日
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 前回前々回で述べてきたように、「100年安心年金」の経済想定は、現実と比べてあまりに楽観的で非現実的な仮定を置いている。とりわけ賃金上昇率が2.5%とされていることが問題だ。

 財政検証「経済中位」の経済前提では、それまで-0.2~-0.6%で下落を続けていた賃金が、2010年度から突如として3.4%上昇に転じ、その後も高い伸びを続けて、2016年度2.5%になると想定している。運用利回りも、2009年度1.5%であったものが、徐々に上昇し、2020年以降4.1%という高い利回りになることが想定されている。これらは明らかに不自然な想定だ。

 実際には、日本の賃金は、1990年代の末以降継続的に下落している。現金給与支給額は、2001年の103.9から2009年の95.1に下落した。年平均下落率で言えば、1%ということになる。

 将来の賃金上昇率が想定の2.5%を実現できなければ、結果は大きく違ってくる。この場合には、標準報酬が伸びず、保険料も伸びない。他方で給付は名目で固定されている。このため、財政収支が悪化する。

 収支がマイナスになった場合に積立金を取り崩すこととすれば、積立金残高が減少し、運用益も減少する。したがって、収支悪化は加速することになる。

 前回では、積立金の運用益を無視した簡便計算を行なったのだが、今回はもう少し本格的なシミュレーションを行なってみることとしよう。

賃金が上昇しなければ標準報酬は増えない

 財政検証においては、標準報酬が【図表1】のL欄に示すような伸びになるとされている。

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野口悠紀雄 [早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問]

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ファイナンス総合研究所顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』等、最新刊に『仮想通貨革命』がある。野口悠紀雄ホームページ

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