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医療・介護 大転換

認知症に有効な環境作り「回想法」とは?

浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]
【第43回】 2015年11月11日
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 認知症の人への接し方がなかなか多くの人に理解されない。

 「記憶が消えて、その苛立ちから粗暴な行動に走る人」「突然大声を出して周りを困らせる人」「家を勝手に出て行って、そのあとを追い駆けるのが大変」――。こうした行動にはいずれも原因があり、それなりの理由がある。周囲からかけられる声や物言い、行動などで不快な思いをしても、なかなか反論できない。きちんと声を上げることができ難い。「それは違う」「やめて欲しい」と伝えられないもどかしい思いが募る。それが時に、周囲を惑わす言動となって現れる。

 新しい事態や環境にすぐに対応することが難しいのが認知症の人たちである。そのため以前の生活と大きく異なる状況が目の前に現れると、なかなか馴染めない。そのストレスや軋轢が元で、周囲の人たちを戸惑わせる言動につながってしまう。深刻な事態を呼びみかねない。

 こうした現場体験から、認知症の人が、かつて暮らしていた生活に出来るだけ近い環境や状況が大事だと判明してきた。言葉かけひとつでも、初めてのことには困惑してしまう。

 そこで、以前の生活環境に近い暮らしをできるだけ「再現」する試みが生まれてきた。グループホームというケア様式である。スウェーデンで1980年代に創出された。小さな家庭的な雰囲気の中で、少人数で暮らすスタイルだ。

 10人内外の認知症の入居者がスタッフに見守られながら、24時間、365日生活を送る。掃除や洗濯、調理、食器の片づけなど今まで自宅で行ってきた家事をスタッフも交えてみんなで取り組む。

 かつての楽しい暮らしを思い出しながら過ごすと、落ち着いた気持になる。よく見知った世界に入ると安心感が沸くからだ。同じような試みとして「回想法」がある。

 例えば、アルバムを見ながら子供時代や新婚時代を思い出す。若かったころに流行った歌を口ずさむ。認知症の人は、直前の行動は忘れても、昔の楽しい思い出はよく記憶に残っているからだ。

 英国やオランダへの視察から、日本ではあまり見られない「回想法」に近い仕掛けについて考えていきたい。

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浅川澄一 [福祉ジャーナリスト(前・日本経済新聞社編集委員)]

あさかわ・すみかず/1948年2月東京都中野区生まれ。東京都立西高校から慶應義塾大学経済学部に。1971年日本経済新聞社に入社。小売り・流通業、ファッション、家電、サービス産業などを担当。87年に月刊誌『日経トレンディ』を創刊、初代編集長を5年間勤める。93年流通経済部長、95年マルチメディア局編成部長などを経て、98年から編集委員。高齢者ケア、少子化、NPO活度などを担当。2011年2月に定年退社。同年6月に公益社団法人長寿社会文化協会常務理事に就任。66歳。

 


医療・介護 大転換

2014年4月に診療報酬が改定され、ついで6月には「地域医療・介護総合確保推進法」が成立した。これによって、我が国の「医療」「介護」大転換に向けて、第一歩が踏み出された。少子高齢化が急速に進む中で、日本の社会保障はどう大きく変革するのか。なかなかその全貌が見えてこない、医療・介護大転換の内容を丁寧に解説していく。

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