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小宮一慶の週末経営塾

経営者は後継者にまず何を学ばせるべきか

小宮一慶
【第26回】 2015年11月14日
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「リーダーシップの本質」とは

 中小企業経営者にとって、後継者となるリーダーの育成は切実であり頭の痛い問題です。そこで今回から2回に渡って、後継者の育て方(リーダー育成法)をテーマにお話します。

小宮一慶
小宮コンサルタンツ代表

 今回は、経営者にとって最も大切な「正しい考え方」をいかに後継者が理解するかということを説明します。

 まずは、マクロ経済の話を少しだけします。このことが今回のテーマに深く関係しているからです。安倍首相は名目GDP(国内総生産)を2020年頃までに600兆円に引き上げることを目標に据えました。現状の名目GDPは約500兆円なので、100兆円程度の上乗せが必要ですが、日本の名目GDPは1990年代初頭以降、500兆円前後でほぼ横ばい状態を続けています。

 その間にアメリカは約3倍、中国は約15倍に伸びています。他の主要国も伸びており、日本のような名目GDPが伸びていない国はありません。その原因として冷戦構造の崩壊、バブルの崩壊というようなことが挙げられますが、それは諸外国だって経験していることです。なぜ日本だけが取り残されたのでしょう。

 私は次のような仮説を持っています。90年代初頭というのは、戦前の教育をまともに受けた人たちが政財界から引退しはじめた時期です。その時期と、GDPの伸びが止まった時期がぴったり一致していることに注目しています。

 良い悪いは別にして戦前の教育には生き方やリーダーシップの本質である「正しい考え方」に関わる教えが盛り込まれていました。戦後教育ではその部分が戦争と結びついたことですべて否定され、そのために、90年台初頭から正しい考え方を身に付けたリーダーが一気に減り、その結果日本だけが成長から取り残されて、GDPが伸び悩んでいるのではないでしょうか。

 もう少し歴史をさかのぼると、江戸時代のリーダーは武士階級でした。彼らは小さい頃から藩校へ通い儒教や朱子学を学びました。白虎隊の学び舎だった「会津藩校 日新館」には藩士の子弟が10歳になると通ったと伝えられています。明治維新によって日本の近代学校教育が始まりましたが、そこでも、薩長土肥を中心とした旧武士層が政権の主流でしたから、儒教の考え考え方が重用されました。

 明治政府は、道徳教育を「修身」という科目で教えました。この「修身」という言葉は、儒教を代表する「四書五経」のひとつである『大学』にある言葉です。その冒頭では「大学の道は明徳を明らかにするに在り」と書かれています。明徳とは「高い徳」のことです。『大学』では、リーダーにとって絶対必要な徳を高めるためには「修身」が大切であると説きました。「修身・斉家・治国・平天下(天下を治めるにはまず自分の行いを正しくし、家庭をととのえ、国家を治め、天下を平和にする)」とあるように、まず自身の身を修めるという「修身」が必要なのです。

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小宮一慶

京都大学法学部卒業。米国ダートマス大学タック経営大学院留学(MBA)、東京銀行、岡本アソシエイツ、日本福祉サービス (現、セントケア)を経て独立し現職。名古屋大学客員教授(平成26年度後期)。企業規模、業種を超えた「経営の原理原則」を元に、幅広く経営コンサルティング活動を行う一方、年100回以上講演を行う。『ビジネスマンのための「発見力」養成講座』(ディスカヴァー21)など著書は100冊を超え、現在も経済紙等に連載を抱える。


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経営課題を抱えて日々悩む経営者に向けて、数々の企業経営者に伴走してきた経営コンサルタントの小宮一慶氏が課題解決の「ヒント」を提供。どんな業種にも通じる経営の原理原則をおさえながら、経営者はどうあるべきか、実際の経営現場で何を実行すべきか、を語る。

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