ギリシャは当初の想定よりも大きな問題になった。

 正直に言おう。ギリシャの財政悪化は想定の範囲内であり、欧州経済は今後もたつくが、米国の金融緩和が中国などの新興国の経済成長を後押しする現在の構図は崩れないだろうし、むしろ欧州の問題でこの状況がより長く温存されるのではないか、というのが筆者の読み筋だった。したがって、ギリシャ・欧州に関連して多少の波乱はあるかもしれないが、投資家としては「鈍感力」を発揮して、世界の株式に対して強気でいていいと考えていた。今こそその鈍感力を発揮すべきときかもしれないが、いくつか気になることがある。

 まず、円貨にするとざっと90兆円という支援のパッケージがあまりに大きい。また、支援を決めた状況があまりに緊迫している。表面化していないけれども、もっと差し迫った問題があるのではないか、と疑いたくなる。

 教訓の宝庫であり、われわれの貴重な経験でもある日本のバブルとその崩壊のプロセスに思いを馳せると、ギリシャ問題は住専問題と雰囲気が似ている。共に、問題の存在に意外性はない。そして、ギリシャへの支援決定には感情的な反発もあって、時間がかかった。

 住専問題は、結局、公的資金投入で決着したが、最大かつ真の問題であった銀行の不良債権問題が残り、悪化を続けて、数年後により大きな問題として登場した。

 売り方側から見て、ギリシャそして、ポルトガルやスペインの国債は、大きな資金枠と中央銀行の本気を見せられては、すぐには仕掛けが成立しないかもしれない。しかし、欧州でも起こった不動産バブルとその崩壊に伴う金融機関の不良債権が簡単に片づくとは思えない。今のところ、民間銀行→その国の政府→欧州中銀・救済基金→欧州の強国による負担、といったツケ回しが強そうに見えるが、これが本当に機能するかについては不確実性がある。対策に時間を取ることができる週末以外に問題が起きた(起こされた)場合には、不測の事態がありうる。