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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

習近平が胡耀邦の“名誉回復”に乗り出した真の狙い

加藤嘉一
【第65回】 2015年11月24日
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胡耀邦の生誕百周年記念座談会
が開催された意義と教訓

胡耀邦を再評価しようとする動きの背景には、何があるのか

 2015年11月20日午前、共産党中央が北京の天安門広場の西側に隣接する人民大会堂である座談会を開いた。

 「胡耀邦同志の生誕百周年を記念」する座談会である。

 本稿では、党中央が同座談会を開催した意義と教訓を模索していくが、ここで早速、1つのインプリケーションとしての結論を述べたい。その上で、検証作業を進めていくことにする。

 胡耀邦生誕百周年に政治局常務委員7人全員が出席し、かつ習近平自ら談話を発表した事実は、共産党中央が胡耀邦に正当な歴史的評価を下そうと決断した結果に他ならない。一方で、この動きが政治レベルを含めた全体的改革の促進に繋がるか否かに関しては慎重に見ていくべきだ。習近平は自らの需要と視角から胡耀邦の功績を部分的に汲み取り、自らの政治的ミッションの進行に利用しようとしている観すらある。

 1915年11月20日、胡耀邦は湖南省瀏陽県に生まれた。15歳で共産主義青年団(共青団)に入団し、中華人民共和国設立前に同団中央宣伝部長、組織部長を(1936年)、設立後は同中央の最高位である第一書記や(1957年)、陝西省党委員会第一書記(1964年)などを歴任した。

 「“文化大革命”の期間中、胡耀邦同志は深刻な迫害を受けたが、個人的な栄誉や屈辱、安定あるいは危機的状況を顧みず、林彪や江青といった反革命グループと断固たる闘争を繰り広げた。1975年、中国科学院党組織の責任者を務めた際には、鄧小平同志が提起した“全面整頓路線”を貫徹し、科学技術戦線に関する実情を的確に反映し、“文化大革命”が科学技術事業にもたらした負の影響を取り除くべく尽力した」(習近平2015.11.20談話)

 その能力と重要性を高く評価していた鄧小平の政治的状況や考慮に少なからず左右された政治人生であったが、その後、胡耀邦は1977年に中央委員兼中央組織部長に、1978年に中央政治委員兼中央宣伝部長に、そして1980年には政治局常務委員兼中央委員会総書記、翌年同委員会主席にまで登りつめた。

 私から見て、この期間、胡耀邦が手掛けた事業のなかで軽視できないものが主に2つある。

 1つは文化大革命時代に自らと同じく迫害を受け、冤罪に遭った党幹部や知識人たちの名誉回復に奔走したことである。習近平は11.20談話のなかで次のように語っている。

 「胡耀邦同志は冤罪や誤った案件を改めるための作業を組織し、指導し、幹部政策の多くを手掛けた。迫害を受けた大量の長老を職場に復帰させ、冤罪や迫害を受けた大量の幹部、知識人、一般市民の名誉を回復させた」

 名誉回復の対象には、習近平の実父で、国務院副総理・政治局委員などを歴任した習仲勲、中華人民共和国元帥で中央政治局委員・中央軍事委員会副主席などを歴任した彭徳懐、中華人民共和国主席を務めた劉少奇などがいた。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

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