ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

習近平・馬英九会談実現の背景にある動機と懸念

加藤嘉一
【第64回】 2015年11月10日
1
nextpage

中国と台湾のトップ会談が実現
両岸が極秘で進めた“習馬会”

習近平と馬英九による中国と台湾の歴史的なトップ会談が開催された。いわゆる“馬習会”よって、国交のない両国は「1つの中国」に向け、今後どのように動き出すのだろうか 
Photo:新華社/アフロ

 「我々も公表される直前まで知り得なかった。両岸がそれだけ極秘扱いで準備を進めてきたのが今回の“習馬会”ということだ」

 11月7日夜(北京時間)、中国共産党元老に親族を持つ“紅二代”の1人が北京で私にこう語った。

“習馬会”とは習近平・馬英九会談を指す。台湾では通常“馬習会”と称される。

 11月7日15時、中華人民共和国が建国された1949年以来、中国と台湾のトップ会談が初めて挙行された。上記の“紅二代”もサプライズを示したように、“中台首脳会談”の開催がオーソライズされたのは直前だった。台湾総統府が11月3日深夜に、中国国務院台湾弁公室主任・張志軍が11月4日午前に公表した。

 会場はシンガポールのシャングリラホテル。

 1993年4月、中国側の対台湾窓口機関の1つである海峡両岸関係協会と台湾側の対中国窓口機関の1つである海峡交流基金会それぞれのトップである汪道涵・辜振甫両氏が、中台双方初の“ハイレベル民間対話”を行ったのもシンガポールだった。この“汪辜会談”が歴史的契機となり、その後、中台間における多角的な関係構築や交流促進につながっている。2014年2月には、中台事務方トップ会談が初めて挙行され、中国国務院台湾弁公室の張志軍主任と台湾行政院大陸委員会の王郁琦主任委員が南京の地で“合流”した。

 「“習馬会”はシンガポールだからこそ開催できた。リー・クアンユーは天国で微笑んでいるに違いない」

 冒頭の“紅二代”はこう述べる。

 新華社《参考消息》によれば(“鄧小平がリー・クアンユーを通じて蒋経国に送った伝言”、2012年8月15日)、1985年9月20日、中国を訪問中のシンガポール建国の父リー・クアンユーは鄧小平との会談中に台湾問題の解決をめぐって話し合った。その際、鄧からリーに対して“両岸の指導者が面会し、台湾問題の解決をめぐって意見交換できる場を手配していただけないか”という懇願をしたという。当時、中華人民共和国とシンガポールの間では国交は存在しなかった

 1990年、中国と国交を結び、台湾と断交してからも、シンガポールは中台双方の狭間で“独自外交”を展開した。台湾行政院長をシンガポールに招待し、中国に強硬的で、“台湾独立”を公に主張した民進党が与党として君臨した2000~2008年の間にも、リー・クアンユーは台湾を二度訪問している。2004年7月、リー・シェンロン首相も実父の路線を継承する形で訪台し、陳水扁総統と公に会談している。2016年1月に開催予定の総統選挙における有力候補でもある蔡英文行政院大陸委員会主任(当時)とも会談している。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
ビジネスプロフェッショナルの方必見!年収2,000万円以上の求人特集
ビジネスプロフェッショナルの方必見!
年収2,000万円以上の求人特集

管理職、経営、スペシャリストなどのキーポジションを国内外の優良・成長企業が求めています。まずはあなたの業界の求人を覗いてみませんか?[PR]

経営課題解決まとめ企業経営・組織マネジメントに役立つ記事をテーマごとにセレクトしました

クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

⇒バックナンバー一覧