口ベタだって
相手と通じ合えればいいんです

「自分は口ベタだ」、と思っている人に話を聞いてみると、「上手な話し方を身につけたい」と考えている人が多いようです。そして実際に、「口ベタ」というコンプレックスを持っていた、この私もそう思っていました。

 口ベタな人に限らず、多くの人は「話し方のスキルを身につけたい」と思っているようで、書店には話し方やコミュニケーションを題材にした本がたくさん並んでいます。たしかに、本を読んだり、セミナーに参加したりして、スキルを学べば、会話に幅が出たり、人を惹きつけるような話し方ができるようになるかもしれません。

 でも、話し方の本で学んだからといって、すぐに話し上手になれるわけではないのも事実です。野球にたとえるなら、バッティング理論を学んだからといって、すぐにホームランを打てるわけではないのと同じです。それに、スキルやテクニックというのは、会話力を向上させたり、コミュニケーションを円滑にする手助けとなるツールですから、人によって向き、不向きがありますし、使いこなすまでにはそれ相当の練習が必要なのです。

 周囲を見回してみれば気づくと思いますが、みんなそれぞれ、話し方や感情表現の方法は異なっているはずです。おしゃべりな人もいれば、無口な人もいます。滑らかな口調で流暢に話す人もいれば、一語一語、自分の言葉を確かめるようにゆっくり話す人もいます。もちろん、話し上手な人もいれば口ベタな人もいるでしょう。

 社交的かそうでないかといった個性の問題はありますが、人は、1人ひとりが、それぞれ違ったやり方で、周囲とコミュニケーションを取っています。話し方や感情表現の方法は、その人の個性であって、人と違っているのが当然なんですね。ですから、少し乱暴な言い方をすれば、どんなコミュニケーションの方法を取ってもいいわけですし、たとえ無口だろうと、口ベタだろうと相手と通じ合えればいいのです。

「そうはいっても口ベタより話し上手のほうがいいじゃないか……」と思われた人も多いのではないでしょうか。そう思うのは当然です。口ベタよりは話し上手のほうがいいと思うのは、当たり前のことではないかと思います。