総合合算制度をやめる?
逆方向に向かう税制・財政政策
24日、安倍首相が軽減税率は「税・社会保障一体改革に影響を及ぼさない範囲で」と、谷垣幹事長と宮沢税制調査会長に指示をしたという。この発言は事実上、「4000億円の財源がかかる総合合算制度の導入を取りやめて、その財源の範囲で軽減税率を導入する」ということを意味している。
幅広く1兆円前後の範囲で軽減税率の導入を目指す公明党としては、「受け入れられない」ということで反発した。そこで菅官房長官は、「総理のそのような発言はなかった」と否定して見せた。
常識的に考えて、何らかの指示がなかったら総理たちが会談するわけがない。官房長官の対応は、反発した公明党に気を遣ってのものだろう。
ここで導入が見送られる「総合合算制度」というのは、低所得者の医療費や介護費などに負担の上限を設けるという、まさに低所得者対策である。それを取りやめるということになれば、そのこと自体が、税・社会保障一体改革の理念に逆行することになる。
加えて、高所得者により利益が多く及ぶのが軽減税率である。つまり、総理の指示は、「低所得者から高所得者への税金の移転」ということになり、アベノミクスの税制・財政政策が、これまでの政策と逆方向に向かうことを意味する。今どき先進国でこのような政策をとる国はないだろう。
25日付の読売新聞朝刊は、「税・社会保障一体改革改革の枠内とは」という見出しで「社会保障の充実影響なし」という記事を掲載しているが、これは意図的な(?)誤報である。一体改革で決められている社会保障財源が振り替わるのだから、社会保障が影響を受けない(縮小されない)わけがない。
ついでに言えば、いまだ一部の新聞は、新聞紙の軽減税率の適用にこだわっているが、これは低所得者対策ではないし、ましてや一体改革とは何の関連もないものである。
社会の公器が「公益」と「私益」を混同すると、読者離れが一層進むのではないかと危惧している。ネットに溢れるこの声を新聞社の幹部は読まないのだろうか。
4000億円の範囲内での軽減税率ということは、生鮮食料品を対象とする場合の3400億円を600億円超えることになる。つまり、生鮮食料品に加えて、「一部の加工食品」が軽減税率の対象になることを意味する。