キッチン設備業界の再編が加速している。攻勢をかけるのが住生活グループ。今年、キッチン専業大手のサンウエーブ工業を子会社化した同社は、現在、キッチン設備市場でINAXとトステムをあわせて28%のトップシェアを握る。キッチンの生産をサンウエーブに統合する一方、営業面でもINAXサンウエーブマーケティングを設立した。

 同社の石原俊一社長は、「リフォーム事業を強化し、2014年3月期に約9%増の3300億円の売上高を目指す」と強気だ。商品ラインナップの拡充で、消費者や施工業者にとってはメーカーからの商品情報やバックアップサービスがワンストップで受けられるのがメリットだという。人手のかかるショールームも現在の230ヵ所から100ヵ所に統合し、効率化と大型化を同時に図り、シェアアップにつなげるという。

 キッチン業界はいまやパイの奪い合いと化している。そもそも、住宅市場が縮小しており、昨年の新築住宅着工件数は77万戸と、45年ぶりの80万戸切りを記録した。「大きな回復は期待できない」(川本隆一・INAX社長)というのが一致した見方だ。

 そこでターゲットとなるのがリフォーム。築8~37年のリフォーム潜在需要は3000万戸あるという。

 キッチン業界はトップのINAX‐サンウエーブ連合でもシェアは3割未満。タカラスタンダード、クリナップが三つ巴で、それにパナソニック電工が続く。競争は厳しく、現に業界5位でタカラとの提携交渉を進めていたミカドが昨年、経営破綻した。ヤマハも赤字のリビング事業を今年3月、ファンドに売却した。

 総合化によるINAXと対局にあるのがクリナップ。「卸や有力工務店などは、メーカーに支配されることを拒む。ワンストップサービスなどは不要だ。キッチンならどこがいいかを厳しく調べたうえで当社を選んでくれるところがたくさんある」(井上強一・クリナップ社長)と、専業での生き残りを模索する。

 キッチン業界にとっての“黒船”は、ニトリやイケアなどの小売り。工務店を通さないで、プライベートブランドのキッチンを扱うようになった。「使い勝手などで差別化しているが、値段だけでは太刀打ちできない」(大手キッチンメーカー首脳)存在になった。

 さらに業界の撹乱要素になりそうなのが外資だ。「中国メーカーが日本に進出してくることになれば、日本メーカーを買収して生産・販売の足がかりにすることは間違いない」(大手メーカー社長)。

 さらなる再編は必至のようだ。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 大坪稚子)

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