小惑星探査機「はやぶさ」は、日本の宇宙開発に対して人々の大きな関心を集め、また勇気をもたらした。本日12月3日は、その後継機「はやぶさ2」が地球スイングバイを行う。これに合わせ、「宇宙ビジネス」を考察するシリーズの第2回目として、日本の注目すべき取り組みを紹介する。筆者の齊田興哉氏は、宇宙航空研究開発機構JAXAで人工衛星の開発プロジェクトに従事した経歴を持つ、宇宙航空事業の専門家である。
本日12月3日、「はやぶさ2」が地球スイングバイを試みる。「はやぶさ2」は、あの「はやぶさ」に続く小惑星探査機であり、小惑星「Ryugu」(リュウグウ)の海水の起源や生命の原材料となった有機物の起源を探ることを目的としている。
スイングバイとは、天体の引力を利用して、目的の惑星へ到達するために探査機の軌道を変更することである。スイングバイ後は、小惑星Ryuguの軌道に近い軌道に入り、2018年夏頃に到着する計画だ。
さて、世界の宇宙ビジネスの最新動向を見た前回に続き、第2回では、日本の宇宙ビジネスの近年の動向と、その特徴を見ることにしたい。
まずは、コスト競争力も含めて欧米と真っ向勝負する事例を紹介しよう。
欧米と同じ土俵で真っ向勝負
低コストの新型ロケットと衛星開発
日本のロケットは、欧米に比べ、マーケットの獲得においては大きく後れを取っているものの、打ち上げ成功確率などを含めた技術力は同水準である。そのため、日本は世界の競合に対して技術力を中心に真っ向勝負を試みている。
宇宙航空研究機構JAXAは、「H-II」シリーズの後継となる新型基幹ロケット「H3」の概要を発表した。現在の主力である「H-IIA」に対し、衛星の搭載能力を、液体ロケットエンジンや固体ロケットブースターの基数により1.3~1.5倍とすることができるという。フェアリングも大型化するということで、大型衛星の打ち上げサービスにも対応が期待できる。
また、設計の共通化などを図ることで、打ち上げ費用を50億円程度と現行よりも半減することが可能であり、世界有数のロケット打ち上げ会社であるULA(United Launch Alliance:ロッキード・マーティンとボーイングとの合弁会社)、アリアンスペース(Arian Space)社やスペースX(Space X)社に対しても十分にコスト競争力を発揮することができると期待されている。2020年には試験機1号機が打ち上げられる計画である。
出所:JAXA
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