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もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら
【第6回】 2015年12月9日
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岩崎 夏海

「経営学者はドラッカーなんて読まない」は本当!?
【入山章栄×岩崎夏海】対談(前編)

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岩崎夏海(いわさき・なつみ) 1968年生まれ。東京都日野市出身。東京藝術大学建築科卒。大学卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として多くのテレビ番組の制作に参加。その後、アイドルグループAKB48のプロデュースなどにも携わる。著書に『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(ダイヤモンド社)など多数。

岩崎 それは、ドラッカーの出発点が学問に対する絶望だったからかもしれません。1929年にアメリカで大恐慌が起こったとき、彼は20歳。当時は「恐慌は起き得ない」という理論があって、経済学を勉強していたドラッカーもそれを信じていたんですね。でも、皮肉なことに、その理論が恐慌をひどくしてしまった側面もあった。その理論を信じた人々がさらなる投機に走って、結果的に大暴落の憂き目を見、路頭に迷ってしまったからです。ドラッカーはかねてから「人を幸せにしたい」という信念を持っていたので、多くの人が路頭に迷っている様子を見て「経済学は人を幸せにできないのか?」と疑問を持ったそうです。

入山 ああ、わかるような気がします。

岩崎 その意味で、ドラッカーは何より「現実世界に寄与したい」と考えていたので、彼の本が「学問」にならなかったのは必然かもしれません。実際、ちまたでは「経営学者」とも言われていますが、自分ではそれを好まずに「学者というなら社会生態学者で、ダーウィンみたいなものだ」と言っています。つまり、事象を観察して、その結果を省察して、新しい現実を発見するということですね。

入山 なるほど、社会生態学者か。そう言われるとしっくりきますね。

岩崎  僕自身、はじめて『マネジメント』を読んだとき、ずいぶん過激なことが書いてあるなあと思ったんです。「このような資質(注・真摯さ)を欠く者は、いかに愛想がよく、助けになり、人づきあいがよかろうと、またいかに有能であって聡明であろうと危険である。そのような者は、マネージャーとしても紳士としても失格である」というところとか、なんというか……高僧の説教にも近いものがありますよね。

入山 あはは、説教ですか(笑)。でも、それが多くのビジネスマンに響くんでしょうね。学者って、自分がおもしろいと思っていることを研究するために学者をやっている人ばかりだから、「役に立つこと」より「真理を追究すること」のほうが大事なんです。ごくまれに「世の中の役に立ちたい」という人もいるかもしれないけれど、それだと学者間の競争に負けてしまう。

岩崎 なるほど、そうなんですね。

入山 世界の経営学のトップジャーナルである「ストラテジック・マネジメント・ジャーナル」に2012年に発表された論文は、73本。「この研究がいかに実務に役に立つか」はだいたいどの論文にも1パラグラフ程度は書いてありますが、この73本のうち、その部分に2パラグラフ以上割いていたのはせいぜい3本程度ですからね。

岩崎 へえ!

入山 だから、「世の中の役に立ちたい、インパクトを与えたい」というところから学者を志すと、学問の途中で絶望しちゃう人がいるんです。もちろん、どちらがいいという話ではなく、考え方の違いなんですよね。

岩崎 入山先生も、学者でいることのモチベーションは、個人的な「おもしろさ」ですか?

入山 そうですね。役に立つかどうかよりも、「おもしろいか、おもしろくないか」が僕の最大の価値基準ですね。研究も、本を出すことも、メディアに出ることも、おもしろいから続けているんだと思います。こうやって岩崎さんとお話するのだって、めったにできないおもしろい経験ですから。

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岩崎夏海(いわさき・なつみ)

1968年生まれ。東京都日野市出身。東京藝術大学建築科卒。 大学卒業後、作詞家の秋元康氏に師事。放送作家として『とんねるずのみなさんのおかげです』『ダウンタウンのごっつええ感じ』等、テレビ番組の制作に参加。その後、アイドルグループAKB48のプロデュースなどにも携わる。2009年12月、『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』(ダイヤモンド社)を著し、ベストセラーに。他の著書に『エースの系譜』(講談社)、『小説の読み方の教科書』(潮出版社)、『チャボとウサギの事件』(文藝春秋)、『宇宙って面白いの?』(講談社)、『まずいラーメン屋はどこへ消えた?―「椅子取りゲーム社会」で生き残る方法』(小学館)、『部屋を活かせば人生が変わる』(部屋を考える会著/夜間飛行)、『『もしドラ』はなぜ売れたのか?』(東洋経済新報社)、『競争考』(心交社)などがある。 また、ドワンゴ・夜間飛行にて有料メルマガ『ハックルベリーに会いに行く』を配信中。Youtubeチャンネル『ハックルテレビ』を運営。2015年から岩崎書店の社外取締役となり、児童書のプロデュースにも携わる。他に、「岩崎夏海クリエイター塾」の講師を2014年から務めている。

 


もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら

275万部を突破した『もしドラ』から6年。再びドラッカーを題材にした新刊『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら』を書き下ろした著者・岩崎夏海氏が、各界の著名人を迎え、今作のテーマについて語り合います。

「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『イノベーションと企業家精神』を読んだら」

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