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校條浩 IoT産業革命
【第10回】 2015年12月9日
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校條 浩 [ネットサービス・ベンチャーズ マネージング・パートナー]

周辺の一見怪しげな金融サービスから
フィンテック革命の波は起きている

狭い定義で考えると
本質を見失う

 今、金融システムがITにより本質的に変革する時代を迎えようとしている。モバイル、クラウド、ソーシャルネットワークによりITの質と量が臨界レベルを超え、その存在が空気のように人間の活動、そしてそれを支える産業の骨組みの基本となってくる。

 ITによる効率化により均質化されたサービスが広く大衆に広まった時代から、これからはITにより人・モノの世界と金融の数字・デジタルの世界がつながることによりきめ細かくカスタマイズされたサービスが提供される時代になるであろう。昨今はやりのFintech(フィンテック)は、このような文脈で開発される金融システムのことだ。これをスマートフォンによるペイメントシステムの開発などという狭い定義で考えると本当のFintechの姿は見えてこない。

 変革の波は常に周辺から起こる。ITが技術的、コスト的な垣根を劇的に下げたことにより、周辺から立ち上がるベンチャー企業の提供する新たな製品やサービスが一気に普及することが可能になってきた。ベンチャー企業が開発する一見怪しげなサービスに注目することにより、変革の糸口を垣間見ることができる。

 Fintechの一端を理解するのに、このような周辺のサービスが次々と立ち上がるIoT分野に注目してみよう。

 現金の代わりとして広く普及したクレジットカードだが、人と金融システムをつないでいるのは相変わらずプラスチックのカードだ。一人で何種類ものクレジットカードを保有していることは珍しくないし、クレジットカード以外に銀行ATMカード、ポイントカード、会員証、など覚えきれないほどのカードがそれに加わる。

 全部の保有カードを持ち歩くことは不可能に近い。しかし、これらすべてがスマートフォンのペイメントシステムにより置き換えられるには相当の時間がかかるであろう。そこで、プラスチックカードの煩雑さを解消しようと、ICカード一枚ですべてのカードを使えるようにする「ユニバーサル・クレジットカード」と呼ばれる仕組みが開発されている。

 特殊なICカードに種々のカードの情報を記憶させ、電子的に制御された磁気ストライプにより、通常のカードリーダーを介して通信できるようにした。一つのカードを持ち歩くだけでよいという利便性だけでなく、紛失時に悪用を無効とするセキュリティーの高さを謳っている。

 2012年創業のCoinが代表格だが、他にもPlastc、Omne、Stratosなどの競合ベンチャーが立ち上がっている。なかでもStratosは、カードが使われる位置を感知して過去の利用履歴から一番利用の可能性の高いカードを示してくれる。Stratosは年契約(会費は年95ドル)なので、サービスを常に改善、付加できる。ユーザーの履歴行動を分析して、より高度なサービスを提供しようとしていることは明らかだ。顧客囲い込みができれば、支払い方法がスマートフォンに移行してもそのまま顧客をつなぎとめることが可能だという目論見もあるだろう。

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校條 浩(めんじょう・ひろし)[ネットサービス・ベンチャーズ マネージング・パートナー]

東京大学理学部卒、同修士課程修了。マサチューセッツ工科大学(MIT)工学修士。小西六写真工業(現コニカミノルタ)にて写真フィルムの開発に従事。その後MITマイクロシステムズ研究所、ボストン・コンサルティング・グループを経て、1991年にシリコンバレーに渡る。1994年よりマッケンナ・グループのパートナーに就任。2002年に「ネットサービス・ベンチャーズ」を創業し、シリコンバレーでのベンチャー投資・インキュベーションと日本企業への事業コンサルティングを進める。2012年より大阪市特別参与、2013年~14年に同特別顧問。シリコンバレーから大阪に出向く異色のアドバイザーとして活動。関西初の独立系グローバルベンチャーキャピタル「ハックベンチャーズ」を設立。スタンフォード大学STAJE顧問、Japan Society US-Japan Innovation Award委員会理事、Silicon Valley Japanese Entrepreneurs Networkボードメンバー。主な共著書に『ITの正体』『シリコンバレーの秘密』(インプレス)、『日本的経営を忘れた日本企業へ』『成長を創造する経営』、訳書に『リアルタイム』『スマート・カンパニー』(いずれもダイヤモンド社)など。日経産業新聞においてコラム「新風シリコンバレー」を連載中。


校條浩 IoT産業革命

今までの20年は、ソフトウェア、ネットワーク、インターネットを中心に新産業を創出したアメリカが一人勝ちであった。これからの20年は、IoTが新産業創出のキーワードとなる。本連載では、IoT という新たなイノベーションの潮流と、それによりもたらせる産業革命について、シリコンバレーの現場から報告する。

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