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星野リゾート代表 星野佳路

インバウンド狙いだけでは観光立国にはなれない

星野佳路 [星野リゾート代表]
【第3回】 2015年12月21日
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Photo by Yoshihisa Wada

「観光立国」本来の趣旨が見失われている

 私は経済同友会観光立国委員会の委員長を3期務めたが、日本の「観光立国政策」への提言がいくつかある。リゾート経営をする中で、日々現場で実感することを元に、観光をどう経済成長に結びつけるべきかを考えてきた。

 日本の観光政策は、今、訪日観光客(インバウンド)の増加や爆買いに軸足がぶらされているのではないか。「観光立国」の真の趣旨は、観光を軸として地方に新たな経済基盤をつくり、地方創生のエンジンとすることであったはずだ。

 インバウンド客が「2020年までに2000万人」という政府目標が、前倒しで達成されるほどの勢いが続いている。「観光立国」は着実に進展しているともいう。

 しかし私は、インバウンドの増加そのものが目標にすり替わってしまったかのような政府や報道に違和感を覚える。

 観光産業は、地方と共にあり、地方と共に持続するにはどうすればよいかを考え続けている。雇用を生み出し、人々の自立を支え、経済に貢献し、結果として地方文化の持続と成長の基盤になる。それが「観光立国」の本来の趣旨だ。

 日本の観光産業の付加価値誘発効果(総需要)は約24兆円で名目GDPの5.0%を占めている。自動車、建設、機械、電機、金融に次ぐ5番目に大きな産業だ。一方、訪日観光客の旅行消費額は2兆円ほどで、観光総需要からすれば微々たるもの。日本の観光産業は、9割を超える国内旅行市場で支えられているという厳然とした事実がある。

 その国内旅行市場が「観光立国」によって持続的になってきているかと言えばそうではない。日本の人たちは旅行をしなくなっている。国内宿泊旅行の実施率は、2005年に比べれば9ポイントも低下し、58%程度になった。特に20~34歳の男性の実施率は51.3%という低さで、1年間に1泊以上の旅をする男性は、2人に1人しかいない。

 なぜ旅行をしなくなったのか。その理由を特定はできない。スマホにお金がかかりすぎているのかもしれないし、内向き志向なのかもしれない。後述するが、私たち観光業者の努力不足も大きいだろう。

 しかし、20~34歳というこれから家庭を持ち、家族と共に国内の旅行市場をリードしていくことを期待される世代が旅行に出ないのでは、国内旅行市場は決して持続的な成長状態にはならない。

 「インバウンド客で稼げばよい」という意見もあるが、これも決して持続的ではない。世界では、新興国で中間所得層が増えれば自ずと海外旅行客は増える。実際、訪日客が増加しても、アジアにおける外国人観光客数は、日本は7位のままだ。各国が、皆、増やしているのである。

 振り返れば1980年代の日本人もニューヨークやパリで"爆買い"をしていた。当時、ワイキキのホテルで「味噌汁はないのか」と文句を言う日本人客もいたようだ。

 そして日本人は、すでに行くべき場所を失ったかのように、出国者数は年間1600万人で打ち止まっている。新興国の人たちも、成熟してくれば、日本人と同じようになる。いつまでも秋葉原で高価な炊飯器を買い続けてくれるわけではないのだ。

 「訪日客の増加や爆買い消費効果を経済成長の起爆剤に」などというのは観光立国の本質的な議論ではないということだ。

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星野佳路 [星野リゾート代表]

1960年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1986年米国コーネル大学ホテル経営大学院にて経営学修士号を取得。シティバンク勤務を経て91年1月、星野リゾートの前身である星野温泉の社長に就任。以来「リゾート運営の達人になる」というビジョンを掲げ、圧倒的非日常刊を追求した滞在型リゾート「星のや」をはじめ、全国で宿泊施設、スノー・リゾートを展開している。

 


星野リゾート代表 星野佳路

1960年、長野県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1986年米国コーネル大学ホテル経営大学院にて経営学修士号を取得。シティバンク勤務を経て91年1月、星野リゾートの前身である星野温泉の社長に就任。以来「リゾート運営の達人になる」というビジョンを掲げ、圧倒的非日常刊を追求した滞在型リゾート「星のや」をはじめ、全国で宿泊施設、スノー・リゾートを展開している。

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