鳩山政権発足当初、オバマ大統領の鳩山首相に対する期待は大きかったと思う。オバマ大統領が米国東海岸の名門校ハーバード大学法律学大学院を卒業しているのに対し、鳩山首相は西海岸の名門校スタンフォード大学大学院で博士号を取得している。知力も高いし、英語も堪能だろうから、今度の首相は通訳なしでもコミュニケーションを図れると期待したはずだ。
ところが鳩山政権発足まもなくニューヨークタイムスに奇妙な論文が掲載された。「日本の新しい道」と題する鳩山氏自筆の記事である。筆者が抄訳すると次の通りになる。
「冷戦終結後の日本はアメリカ主導のグローバリズムに苦しめられてきた。資本主義の市場原理主義者たちは、人間を目的としてではなく手段と見なした。その結果人間の尊厳は失われた。そこには人々の生活を守るモラルもなければ節度もなかった。人々は自由主義に内在する危険から身を守るために、友愛(Fraternity)の精神に戻らなければならない」
「日本国家の新しい目標は東アジアの共同体を作ることにある。もちろん日米安全保障条約は不可欠なものではあるが、地理的な観点から、日本は東アジアの一員としてのアイデンティティーを忘れてはならない。アジア共同体を作ることで日本の安全保障と独立が維持される。」
鳩山首相の「Trust me」に
オバマ大統領は期待した
「友愛」とは何だ。文学者が使うなら分かる。だが現実に国際政治に携わるものが使う言葉ではない。その上、米国とは距離を置こうとしているように読める。民主党が国民の圧倒的な支持を得て誕生したのは喜ばしいことだが、首相の真意を確認する必要があると米側は考えたのだろう。そこには前政権から未解決の沖縄問題があったのだから尚更である。
11月13日に開催された日米首脳会談。和やかな雰囲気の中で、オバマ大統領は鳩山首相の「Trust me(私を信じてください)」発言を信頼した。更に、鳩山首相は12月25日の日本での記者会見で、5月末までにこの問題を解決すると公表した。彼ならば懸案を解決してくれると期待を膨らました。