日本が「もしトラ」を逆手にとり、世界の安全保障を圧倒的にリードする方法もはや「もしトラ」は「ほぼトラ」になった。日本はどう出るか Photo:EPA=時事

トランプ再選に戦々恐々
日本に突き付けられた安全保障リスク

「もしトラ」(もしトランプが再び大統領に当選したら)が話題です。一編集者の私が世界の未来を論じるのは僣越なのですが、「もしトラ」の最大の問題は「トランプ氏が大統領に再選されると日米安保を破棄しかねない」という懸念があるということですから、少しはこれまでの取材経験が生きるのではないかと思って、対応策を考えてみました。

 日米安保なしの日本は孤立します。それは、戦後の日本を建て直した人々に聞いた話がヒントになります。私は文春時代、瀬島龍三氏、中曽根康弘元首相、佐藤栄作元首相など多くの古老に話を聞きました。その中でも、沖縄返還の陰の立役者である末次一郎氏(一般にあまり知られていないので、彼のことはあとで詳しくお話しします)の回顧談が一番参考になると思います。

 彼は私に沖縄返還の実態を詳しく話してくれました。「沖縄返還は、日本人全体で米国に圧力をかけたことが成功の理由です。社会党はソ連寄りでしたが、沖縄返還運動時は、保守系の返還派から社会党にお願いして、全国で強烈なデモを繰り返してもらった。沖縄を返還しないと日本が赤化するという恐怖感を米国に与え、米国はその恐怖に怯え、佐藤総理が最終的に訪米して返還を実現させた。当時の日本は弱小国。こんな腹芸をしないと生き残れない時代でした。弱者の恐喝です」

 前回のトランプ政権も「日米安保のため、もっと多くの犠牲を払え」と要求してきました。では、彼の言う通りにしても、台湾や尖閣が中国に侵略されたとき日米安保を発動するかどうか、トランプ氏の普段の言動を見ると安心できません。

 かと言って、日米安保がなければ、日本は中国、ロシア、米国と海を隔てて3つの超軍事大国と相対することになります。ですから、日米安保は堅持しなければなりませんが、米国に「日本は脅せばすり寄ってくる国だ」と思わせないことが、本気で日本を守る行動をとらせるために重要です。そのための対策を考えてみましょう。