ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
脳が認める勉強法
【第4回】 2016年1月9日
著者・コラム紹介バックナンバー
ベネディクト・キャリー,花塚 恵

勉強法の新常識!まったく知らないことをテストする「事前テスト」の威力

1
nextpage

自己テストは、活用しだいで強力な学習テクニックになる。なかでも最も効果的なのが、自分の知らないことをテストする「事前テスト」だという。なぜ、事前テストが効果的なのか。米国ベストセラー『脳が認める勉強法』より、内容の一部を特別公開する。

間違った推測をすることで
正解する確率が高まる?

 何かの手違いで、新学期の初日に期末試験の問題を手に入れてしまったらどうする?教師の誤送信により、あなたのメールボックスに問題が送られてきたと想像してみてほしい。問題が手元にあると、どんな影響が生まれるだろう?期末試験に向けた勉強の助けとなるだろうか?

 もちろん、助けとなるだろう。問題を注意深く読めば、何に気を配り、何をノートにとればいいのかがわかる。授業中は、試験問題に関係することを教師が口にするたびに耳が反応する。几帳面な性格であれば、期末試験までに全問題の正解を暗記してしまう。そうして期末試験の当日、誰よりも先に回答を終え、Aの成績を確信しながら悠々と教室を出る。

 当然、これは不正行為である。

 では、新学期の初日、期末試験とまったく同じ問題ではないが、その学期で習うことを包括的に網羅した総合テストを受けた場合はどうか?いい点数がとれないのは確かだろう。1問も理解できないかもしれない。

 とはいえ、この連載の第3回で紹介した「テストの実施」のことを思えば、テストを受けるという経験によって、翌日からの授業に対する姿勢が変わる可能性がある。

 こういう考えから、テストを実施する効果として、新たに「事前テストの実施」が提唱されるようになった。

 ローディガー、カーピック、ビョーク夫妻、コーネルといった心理学者たちは、さまざまな実験を通じてあることに気がついた。状況によっては、記憶を検索して失敗しても(つまりは答えを間違っても)、単なる失敗で終わらない。失敗どころか、検索を試みたことによって考え方に変化が生じ、問題に含まれる情報が保存される。

 テストの種類にもよるが、選択形式の場合はとくに、答えを間違うことが学習となる。この学習効果は、回答後すぐに正解を教わったときにとくに顕著となる。

 要するに、「間違った推測」をすることで、次のテストでその問題もしくはそれに関係する問題に正解する確率が増すのだ。

 ずいぶん漠然とした話だと思うかもしれない。自分の知らないことをいきなりテストとして出題され、間違った回答をする──こう言われると、有効な学習手法というよりも、やる気を失い失敗するためのレシピのように思えるだろう。この手法のよさを知るには、あなた自身で試すのがいちばんだ。

 試すとは、自分自身にテストするという意味だ。テストの内容は、あなたがよく知らないことであれば何でもいいし、短いテストでかまわない。

 私はアフリカ諸国の首都をよく知らないので、それを例に話を進めよう。アフリカの国を12選び、友人に5択形式でそれらの首都を答える問題を作ってもらう。1問につき、考える時間は10秒。1問解くたびに、友人に正解を教えてもらう。

 手順はこれでわかったと思う。それでは、携帯電話やノートパソコンは脇に置いてやってみよう。問題の例をいくつかあげておく。

Q.ボツワナの首都は?
●ハボローネ
●ダルエスサラーム
●ハルゲイサ
●オラン
●ザリア
(友人:「正解はハボローネ」)

ガーナの首都は?
●ウアンボ
●ベニン
●アクラ
●マプト
●クマシ
(友人:「正解はアクラ」)

レソトの首都は?
●ルサカ
●ジュバ
●マセル
●コトヌー
●ンジャメナ
(友人:「正解はマセル」)

 こういう問題を12問作るのだ。そして、テストをして答えを想像してみよう。あなたも私と同じでアフリカ諸国の首都に詳しくないなら、ほとんどの答えを間違ったはずだ。

 このテストを受けたことで、12の首都に関する知識は向上したのか?もちろんだ。何しろ、問題に答えるたびに、友人から答えを教えてもらったのだ。知識が向上して当然だ。

1
nextpage
スペシャル・インフォメーションPR
ダイヤモンド・オンライン 関連記事
自分の時間を取り戻そう

自分の時間を取り戻そう

ちきりん 著

定価(税込):本体1,500円+税   発行年月:2016年11月

<内容紹介>
生産性は、論理的思考と同じように、単なるスキルに止まらず価値観や判断軸ともなる重要なもの。しかし日本のホワイトカラー業務では無視され続け、それが意味のない長時間労働と日本経済低迷の一因となっています。そうした状況を打開するため、超人気ブロガーが生産性の重要性と上げ方を多数の事例とともに解説します。

本を購入する
著者セミナー・予定
(POSデータ調べ、11/20~11/26)


注目のトピックスPR


ベネディクト・キャリー(Benedict Carey)

『ニューヨーク・タイムズ』紙サイエンスレポーター。 コロラド大学卒業後、ノースウェスタン大学大学院でジャーナリズムの修士号を取得。フリージャーナリストを経て、『ロサンゼルス・タイムズ』紙の記者として脳科学、医療、健康の記事を執筆。2002年にはミズーリ大学ライフスタイル・ジャーナリズム賞を受賞した。2004年より『ニューヨーク・タイムズ』紙の記者となり、神経科学、精神医学、神経学、日常の心理学を主なテーマとして活動している。読者からのメールがもっとも多い人気記者のひとりで、25年にわたって科学と健康の記事を書き続けている。

 

花塚 恵(はなつか・めぐみ)

翻訳家。福井県福井市生まれ。英国サリー大学卒業。英語講師、企業内翻訳者を経て現職。主な訳書に『決める』(ダイヤモンド社)、『世界トップ3の経営思想家によるはじめる戦略』(大和書房)、『米海軍で屈指の潜水艦艦長による「最強組織」の作り方』(東洋経済新報社)、『スターバックスはなぜ値下げもテレビCMもしないのに強いブランドでいられるのか?』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)などがある。


脳が認める勉強法

最新の科学研究によれば、これまで定説とされてきた勉強法は多くの場合に間違っているという。では、どうすれば脳は最も効率よく学べるのか。米三大紙『ニューヨーク・タイムズ』の人気サイエンスレポーターが、第一線の科学者らへの取材をもとに、脳をフルパワーで働かせる記憶法・勉強法を徹底解明。 米国のベストセラー『脳が認める勉強法』から、内容の一部を特別公開する。

「脳が認める勉強法」

⇒バックナンバー一覧