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日本を元気にする経営学教室

「現場力」とは質の高い「本社力」があってこそつくられる
~日立、トヨタ、旭山動物園に見る“旗”の意義~
早稲田大学ビジネススクール教授 遠藤 功

遠藤 功 [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長],加登 豊 [神戸大学大学院経営学研究科教授],成生達彦 [京都大学大学院経営管理研究部教授],河野宏和 [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]
【第1回】 2010年6月14日
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 先日、今年百周年を迎える日立製作所の発祥の地、日立事業所を訪れる機会があった。電力用大型タービンなどを開発、製造する同社のマザーファクトリーである。

 この事業所には数年前にも訪問したことがあるが、事業所の雰囲気が少し変わっていることに気が付いた。前回訪問した時は事業所全体が重苦しい雰囲気に包まれていたのだが、今回お会いした幹部や従業員の方々の表情には、なぜかそこはかとない明るさが漂っていた。抽象的だが、事業所の空気感が軽やかになったと感じたのだ。

“旗”が掲げられたことによって
現場の空気が変わった

 日立はここ3年連続で最終赤字を計上。2009年3月期には7873億円という巨額の損失を出している。日本を代表する企業のひとつである日立の低迷が、停滞する日本経済の象徴のようにとらえられてもいる。

 業績面ではまだまだ苦しい局面が続く中で、なぜ現場の雰囲気、空気は変わりつつあるのか。それはこの4月に新社長に就任したばかりの中西宏明社長から、明快なメッセージが打ち出されたことがひとつの理由ではないかと、私は思っている。

 中西新社長は就任間もなくこれからの日立の方向性として、社会インフラ事業や情報インフラ事業からなる「社会イノベーション事業」へ注力すると、明確に打ち出した。その中身が具体的にいかなるものかは、これから注視する必要があるが、少なくともこれからの日立の「背骨」が何であるかは見えてきた。

 東芝や三菱電機が「選択と集中」をいち早く実行し、「総合電機メーカー」という看板を下ろしたのに対し、日立は最後まで「総合」にこだわった。しかし、事業特性が大きく異なる、あまりに多岐に渡る事業群を束ねていけるだけの体力や経営技術は、残念ながら日立にはなかった。色々な事業は営んでいるが、どの事業も中途半端で、「チャンピオン」にはなれないという事態に陥ってしまっていた。

 そうした中で、新社長から「社会イノベーション」というキーワードが打ち出された。結果が出るかどうかはこれからの努力次第だが、“旗”が掲げられたことによって、現場の空気が変わった。私の眼にはそう映ったのだ。

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遠藤 功(えんどう いさお) [早稲田大学ビジネススクール教授 株式会社ローランド・ベルガー会長]

1956年生れ。79年早稲田大学商学部卒業、三菱電機入社、米国ボストンカレッジ経営学修士(MBA)。その後、米系戦略コンサルティング会社を経て、2008年から早稲田大学ビジネススクールのMBA/MOTプログラムディレクターとして、ビジネススクールの運営を統轄。また、欧州系最大の戦略コンサルティング・ファームであるローランド・ベルガーの日本法人会長として、経営コンサルティングにも従事。『MBAオペレーション戦略』『現場力を鍛える』『見える化』など著書多数。

加登 豊(かと ゆたか) [神戸大学大学院経営学研究科教授]

1953年生れ。78年3月神戸大学大学院経営学研究科博士課程前期課程修了、86年4月大阪府立大学経済学部助教授、94年1月神戸大学経営学部教授、99年4月神戸大学大学院経営学研究科教授、2008年4月~10年3月経営学研究科長・経営学部長。『インサイト管理会計』『インサイト原価計算』『ケースブック コストマネジメント』『管理会計入門』など著書多数。

成生達彦(なりう たつひこ) [京都大学大学院経営管理研究部教授]

1952年生まれ。78年横浜国立大学大学院経済学研究科修士課程卒業、81年京都大学大学院経済学研究科博士後期課程修学、89年米国ノ-スカロライナ州立大学大学院卒業(Ph.D.)、81年南山大学経営学部に就職、94年に教授、同年京都大学博士(経済学)、98年京都大学大学院経済学研究科教授、2006年京都大学大学院経営管理研究部教授、2008年~09年京都大学大学院経営管理研究部研究部長。主著に『ミクロ経済学入門』など。

河野 宏和(こうの ひろかず) [慶應義塾大学大学院学経営管理研究科委員長 慶応義塾大学ビジネス・スクール校長]

1980年慶應義塾大学工学部卒業、82年同大学院工学研究科修士課程、87年博士課程修了、同年慶應義塾大学大学院経営管理研究科助手、91年工学博士、91年助教授、98年教授となる。2009年10月より慶應義塾大学大学院経営管理研究科委員長、慶應義塾大学ビジネス・スクール校長を務める。1991年7月より1年間、ハーバード大学ビジネス・スクールヘ留学。IEレビュー誌編集委員長、TPM優秀賞審査委員、日本経営工学会理事。


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国内市場は成熟化する一方、グローバル化は急速に進展し、新興国の勃興も著しい。もはや、自ら新たな目標を設定し、ビジネスモデルを構築しなくてはいけない時代に突入。にもかかわらず、日本企業には閉塞感が漂う。この閉塞感を突破するにはどうしたらよいのか。著名ビジネススクールの校長・元校長で、経営学のリーダーたちが、リレー形式で、問題の所在を指摘し、変革のヒントを提起する。

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