ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
森信茂樹の目覚めよ!納税者

軽減税率導入で空く社会保障財源「1兆円の大穴」をどう埋める気か?

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]
【第106回】 2016年1月8日
1
nextpage

最大の目的は選挙対策
問答無用の税制改正

軽減税率の導入で社会保障財源に1兆円の穴が開いた。どうやってこの穴埋めをするのか?

 安倍政権4度目となる平成28年度税制改正は、官邸の強いリーダーシップのもとで、平成29年(2017年)4月の消費税10%引き上げ時の消費税軽減税率導入と、法人実効税率20%台(29.97%)への引き下げが行われた。

 これまでの「決まらない政治」にイライラした国民から見れば、評価すべき決定と映るであろう。しかし、税制改正の中身を吟味すると、十分な議論の結果というより選挙対策の色濃い内容で、今後の予算編成や税制改革に大きな禍根を残す決定とも言える。

 補正予算での年金受給者1人当たり3万円の給付や、食料品・新聞への軽減税率の適用など、どのような政策効果があるのかという議論は一切省略し、とにかく公明党への配慮・選挙対策という理由から決定された。

 とりわけ税制について、これまで長年の知識・経験を兼ね備えた専門家集団である自民党税制調査会の議論をすっ飛ばしたことは、今後のわが国税制のあり方を大きく変えることになる。

 自民党税調の専門家集団は、個別利害を超えた税制の理論を持ち、国家観に基づき、まがりなりにも、公平な税制とは何かを考えてきた。日々選挙民などと接する政治家の肌感覚は、官僚の論理とは異なるもので、税制は両者のバランスで形成されてきた。

 今回の消費税軽減税率の導入は、それを全く根底から覆すもので、議論なしの問答無用の税制改正であったと言えよう。

 税制について総理・官邸が決定権を持つことは、わが国の意思決定のあり方として、本来の姿とも言えよう。しかしそこに大きな危うさや、落とし穴を感じるのは、「議論なく問答無用」「選挙対策」という決定の流儀である。

 このような現政権の手法は、将来の税制の意思決定や日本の税制に大きな禍根を残すことになるだろう。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
ビジネスプロフェッショナルの方必見!年収2,000万円以上の求人特集
ビジネスプロフェッショナルの方必見!
年収2,000万円以上の求人特集

管理職、経営、スペシャリストなどのキーポジションを国内外の優良・成長企業が求めています。まずはあなたの業界の求人を覗いてみませんか?[PR]

経営課題解決まとめ企業経営・組織マネジメントに役立つ記事をテーマごとにセレクトしました

クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

森信茂樹 [中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員]

(もりのぶ しげき)法学博士。東京財団上席研究員、政府税制調査会専門家委員会特別委員。1973年京都大学法学部卒業後、大蔵省入省、主税局総務課長、東京税関長、2004年プリンストン大学で教鞭をとり、財務省財務総合研究所長を最後に退官。その間大阪大学教授、東京大学客員教授。主な著書に、『日本の税制 何が問題か』(岩波書店)『どうなる?どうする!共通番号』(共著、日本経済新聞出版社)『給付つき税額控除』(共著、中央経済社)『抜本的税制改革と消費税』(大蔵財務協会)『日本が生まれ変わる税制改革』(中公新書)など。
 

 


森信茂樹の目覚めよ!納税者

税と社会保障の一体改革は、政治の大テーマとなりつつある。そもそも税・社会保障の形は、国のかたちそのものである。財務省出身で税理論、実務ともに知り抜いた筆者が、独自の視点で、財政、税制、それに関わる政治の動きを、批判的・建設的に評論し、政策提言を行う。

「森信茂樹の目覚めよ!納税者」

⇒バックナンバー一覧