「サムスンは販売台数でパナソニックの10倍は売るのではないか」(大手部品メーカー幹部)
日本のテレビメーカーが、世界トップシェアへの返り咲きを賭ける3Dテレビ商戦だが、絶好調の韓国サムスン電子が早くも行く手を阻んでいる。
サムスンは発売以来すでに全世界で27万台(5月末時点)を販売した。今年3月10日に北米でサムスンとパナソニックが3Dテレビを発売し、本格的に3Dテレビ商戦が火ぶたを切ってから約3ヵ月たつ。販売力やマーケティング力いずれを取ってもサムスンが追随を許さない。正確なシェアは測れないが、関係者の話を総合すると北米1位と見られる。
快進撃の理由は第1に、豊富なモデル数だ。同社は15モデル(LEDバックライト搭載型8、液晶1、プラズマ6)を7月にかけて順次発売する予定で、2モデル(プラズマ)のパナソニックを商品ラインナップで圧倒している。
第2が、確立されたブランド力だ。「LEDテレビ=サムスンというイメージが定着しており、LEDバックライト搭載型の3Dテレビを前面に押し出す戦略に優位な状況」(泉邦昭・3Dコンソーシアム事務局長)だ。実際、米家電量販店最大手、ベストバイの販促に最も有利な場所には、サムスンのLEDバックライト搭載型の3Dテレビが並ぶ。
その一方で、技術力に関しては日本メーカーが上だとの評価もある。たとえば、3D効果は専用メガネで左目用と右目用の画面を交互に見ることで得られるのだが、日本メーカーはその精度が高くクロストーク(二重像)が出にくいため3D効果が高いと評価されている。
問題は、日本メーカーのよりどころであるこの技術力が商品力に転化されず、サムスン製を凌駕できない点にある。
今月末、パナソニックに続きソニーが本格参戦する。各社共にシェア1位を目指すと意気込むが、サムスンに追いつく確たる戦略は見当たらない。再び敗戦が待ち受ける危機だ。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)