混迷極める波乱の経済。震源の中国経済は底打ちするか、アメリカ経済と大統領選の行方、参院選までの日本株はどうなるか!? 「闇株新聞プレミアム」が2016年を大胆予測する全3回の緊急特集。今回は第1回、中国経済&中国株は底打ちするのか?そして日本への影響について、鋭く切り込みます!
あまりにも稚拙な中国の為替・株式市場対策
サーキットブレイカー制度は4営業日で撤回
いまどき中国経済が本当に7%近い成長を続けていると信じる人はいないはずですが、そうは言っても一党独裁の中国共産党が強引にでも取り繕うだろうと考えられていました。ところが中国政府の対策を見ていると、どうもそうではないようです。言うなれば「見ていられないほど稚拙な対応」で市場の混乱をさらに増幅しています。
例えば1月7日早朝、中国人民銀行は人民元の基準値を1ドル=6.5646人民元に設定しました。中国人民銀行は人民元の基準値を昨年8月10~13日に1ドル=6.1162元から6.4010元まで「急激に」引き下げて上海株式の急落を招いたのですが、今度は昨年12月初めの1ドル=6.4元前後から「連日ゆるやかに」引き下げたのです。
「急激」だと弊害が大きかったため「ゆるやか」に引き下げているようですが、どちらにしても「人民元は毎日確実に目減りする」と宣言しているようなものです。当然、為替市場では人民元売り・外貨買いが際限なく出ることになります。これでは海外からの投資など増えようはずもありません。
ご丁寧に中国人民銀行は昨年「人民元の基準値は前日午後遅くの市場取引(基準値の上下2%以内)を参考に決める」としたため、市場では常に先行して人民元売りが出ることになり下落が止まらなくなりました。いかにも稚拙な為替対策です。
人民元の下落は中国からの資金流出を意味し、上海株式も大きく下落しました。奇しくも本年1月4日から株価指数が7%下落すると取引が打ち切られる「サーキットブレーカー制度」が導入されていましたが、4営業日で2度も発動される事態に早くも撤回が決まりました。
だいたい7%下落すると取引が打ち切られるなら、相場環境が悪いときは誰もが「我先に」持株を売却しようとするため、ますます株価下落を加速させることになることがわからなかったのでしょうか。いかにも稚拙な株価対策です。
8604億ドルの外貨準備はどこへ消えた!?
外貨流入が続かないと拡大できない中国経済
そして1月7日の夕刻、予定より大幅に遅れて昨年12月末時点の中国外貨準備高が発表されました。数字は昨年11月末比で1079億ドル減の3兆3304億ドルと、単月では過去最大の減少となり、この1年間でも5126億ドルもの減少となっていました。発表が遅れたはずです。
ところがIMFの推計では2015年の中国経常収支は3478億ドルの黒字で、外貨は中国人民銀行が一元的に買い入れることになっているため、2015年1年間では差引き8604億ドルもの外貨準備が消えてしまったことになります。
中国は外貨準備の通貨別内訳を発表していませんが、全てがドルということはなく3割程度がユーロなど多通貨のはずで、2015年はドルがすべての通貨に対して値上がりしていたためドル建てに換算すると中国の外貨準備は2000億ドルほど目減りしたはずです。
それでも2015年には6500億ドルほどの外貨が消えていることになり、その内訳は外国人の投資引揚げ(減っていますが実際はまだ投資超過のはずです)、中国政府による公式の対外投資、為替管理を潜り抜けた中国人による不正な海外送金でしかなく、圧倒的に最後の不正送金が大きいはずです。
中国経済は貿易黒字と外国からの投資で流入する外貨を中国人民銀行が一元的に買い入れて中国国内の信用創造の準備資産としている実質的には「ドル本位制経済」です。つまりどういう形でも外貨(主にドル)が流入し続けなければ(外貨準備が増加していなければ)経済は拡大できず、外貨準備を増加させるためには人民元が外貨に対して上昇を続けていなければなりません。
人民元が1ドル=6.04元で上昇を止めたのが2014年1月、外貨準備が3兆9932億ドルのピークをつけたのが2014年6月、外貨準備の減少が加速したのが人民元を急落させた2015年8月から、そして中国経済の減速が大きな問題となったのもその頃からと、きっちり符号しています。
確かに人民元安で中国の貿易黒字は増大していますが、これは中国経済の低迷と原油価格の低迷で輸入が前年比で20%も減少しているからで、人民元安の効果ではありません。はっきり言っておきましょう。人民元安は中国経済に壊滅的な弊害をもたらすはずです。そして、現在の中国政府はまさにその人民元安を強行しています。
中国経済の抱える闇の根っこは政治体制にある
日本は政府も企業も「脱中国」を急げ!
繰り返しですが中国経済は外貨が流入していなければ拡大しない構造になっています。ここ2年間(とくにここ半年)は外貨が逆に流出しており、昨年12月から本年初めにかけて人民元をさらに下落させているため、ますます外貨流出が加速していることになります。その大半が国内資金の不正な対外流出であると考えます。
つまり中国経済は少なくとも人民元を下落させているここ半年間はマイナス成長の可能性があります。中国の抱える経済の闇は、経済構造の問題というよりもむしろ稚拙すぎる経済政策の問題、ひいては共産党一党独裁体制が招いている政治問題に他なりません。
そして、この政治体制が劇的に変化しない限り、中国経済の闇が明けることはありません。本来的には景気は季節のように循環するもので、相場格言に「夜明け前がいちばん暗い」というように最悪の状況を耐え抜けばいずれは改善に向かいます。しかし、こと中国経済の闇は耐えていれば何とかなるものではありません。
すでに企業の中には「脱中国」を図り、拠点を周辺国に移したり国内に回帰しているところもありますが、耐えていればなんとかなると思っているのか何ら手を打たずにいたり、逆に中国依存を高めてしまっているところも少なからずあります。投資家としてはそのような企業は将来深刻な事態に陥ることをはっきり認識しておくべきでしょう。
それでは中国の経済規模は本当はどれくらいなのか、また中国の外貨準備に隠れているはずの巨額含み損はいかほどなのか、中国のバランスシートから見る中国経済の「本当の姿」はどういったものなのか、そして何よりも共産党独裁体制の中国が仮に経済危機に陥ってしまった場合、資本主義ルールに従った対応を取ることができるのか……etc.
中国の国家体制と経済の巨大な闇についての話は、来週から「闇株新聞プレミアム」で引き続き徹底的に掘り下げてまいります。本連載「週刊 闇株新聞」がお伝えできるのは、深くて大きな闇の“ほんの入り口”までに過ぎません。
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