社員流動化時代に「人が宝」をお題目にしないダイヤモンド社刊
1890円(税込)

「あらゆる組織が、『人が宝』と言う。ところが、それを行動で示している組織はほとんどない。本気でそう考えている組織はさらにない。ほとんどの組織が、無意識にではあろうが、19世紀の雇用主と同じように、組織が社員を必要としている以上に社員が組織を必要としていると信じ込んでいる」(『プロフェッショナルの条件』)

 きわめて興味深く、かつ、きわめて意味深長なことに、ドラッカーはこの名言において、主語を経営者ではなく、組織にしている。

 あらゆる組織が、「人が宝」と言っているということは、部長も課長も一般社員もそう言っているということである。ありがたいことに、それはほとんどの組織において、常識になっている。

「ところが」とドラッカーは続ける。「それを行動で示している組織はほとんどない」。問題の根は深いのである。

 今までは、「社員は宝」とのお題目ですんだ。だが、これからはそうはいかない。人類誕生以来初めての、最大の革命が始まろうとしている。

 いやなら辞めていける時代がきた。特に、仕事ができて覇気のある人が。

「事実上、すでに組織は、製品やサービスについてと同じように、組織への勧誘についてのマーケティングを行わなければならなくなっている。組織は、人を惹きつけ、引き止められなければならない。彼らを認め、報い、動機づけられなければならない。彼らに仕え、満足させられなければならない」(『プロフェッショナルの条件』)