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「日本らしさ」を売り込めば無限に広がる
爆買いの二次、三次需要

内田和成・早稲田大学大学院商学研究科教授

内田和成 [早稲田大学大学院商学研究科教授]
【第11回】 2016年1月22日
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「爆買い」を誘致するにはコストがかかるが、その先にある「二次需要」「三次需要」も実は想像以上に大きい。多くの経営者はそれに気づいていない

連載第9回では、爆買いの一次需要とコストについてお話ししました。続いて、その先にある「二次需要」「三次需要」について詳しく見ていきましょう。

 「二次需要」とは、爆買いが生み出す経済波及効果のことです。たとえば、ホテルは波及効果がとても大きい。最近、出張をする人は「ビジネスホテルが取れない」と嘆いています。私の周りでは、京都や大阪市内が取れなくなっていると聞きます。大阪の場合、今までなら新大阪まで行けば空きがあったのに、最近では埋まっている。京都なら、滋賀の大津あたりまで離れないと宿泊できないこともある。そして、なおかつ宿泊費も高い。

 ホテルにとっては、単に宿泊客が増えて稼働率が上がるだけではなく、既存客の単価アップにつながります。仮に外国人のお客さんのお蔭で宿泊客が2割増えたら、その2割分が儲かったというだけではなくて、そのために全体の稼働率が上がり、需要が逼迫すれば既存客の料金も値上げすることができます。仮に既存客の料金を5割アップすることができたら、膨大な利益アップになります。もちろん、それをやることが良いかどうかは別の問題ですが。

 コストのほうでお話ししたインフラ整備による設備投資は、当然GDPの押し上げになり、景気高揚につながりますし、一時的かもしれませんが不動産価格も上昇しています。

 また、前回「爆買いのコスト」で挙げた治安についても、今後セキュリティビジネスや損害保険が伸びることも容易に想像できます。

 セコムなどのセキュリティシステムを契約しようとする人も出てくるでしょうし、商店なら万引きのための損害保険に入ったり、物を壊されたり、汚されたりしたときの保険に入ったりするなど、別の需要が生まれてくるわけです。直接的な需要ではないですが、「風が吹けば桶屋が儲かる」という需要はあります。こうした二次需要の部分は、今後ますます増えていくでしょう。

 ホテルの例でわかるように、今までのビジネスに対してプラスの影響が大きい。それから、付帯需要として、たとえば連載第9回でお話しした南部鉄器や、和紙を使った伝統工芸品といったものは、価値が大きく見直されることでしょう。日本人は「外国で流行っている」ということに、ことさら弱いですから。

 ちなみに、高級アイスクリームのハーゲンダッツは、オリジナルはどこか知っていますか? 名前だけ見るとドイツや北欧のイメージですが、実は生まれはニューヨークなんです。アメリカ人もヨーロッパに対する憧れがあり、ヨーロッパ風の名前を付けたということです。そのように、日本の和紙や工芸品、民芸品、工業製品などにも、可能性があるのではないでしょうか。

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内田和成(うちだ かずなり) [早稲田大学大学院商学研究科教授]

東京大学工学部卒、慶應義塾大学経営学修士(MBA)。日本航空を経て、1985年ボストンコンサルティンググループ(BCG)入社。2000年6月から04年12月まで日本代表。09年12月までシニア・アドバイザーを務める。BCG時代はハイテク・情報通信業界、自動車業界幅広い業界で、全社戦略、マーケティング戦略など多岐にわたる分野のコンサルティングを行う。06年4月、早稲田大学院商学研究科教授(現職)。07年4月より早稲田大学ビジネススクール教授。『論点思考』(東洋経済新報社)、『異業種競争戦略』(日本経済新聞出版社)、『スパークする思考』(角川書店)、『仮説思考』(東洋経済新報社)など著書多数。ブログ:「内田和成のビジネスマインド

 


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企業経営に携わるリーダーたちには、経営戦略、ガバナンス、リーダーシップ、組織、イノベーション・マネジメント、そして自社を取り巻く経済環境の分析など、経営に関する様々な分野の知識が求められる。当連載では、企業経営に携わる読者に対し、経営学の教授、コンサルタント、実業家など「経営の第一人者」と呼ばれる識者たちが、「特任解説員」として専門分野における重要テーマを解説していく。彼らの提言からは、企業経営に関する深い教養を得られるはずだ。
 

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