今回のコラムでは、『一流の育て方』に編纂されている膨大な数のエリート家庭の「家庭教育方針アンケート」の中から、「誠実な言行一致」の大切さを扱った箇所を一部紹介し、本書に収められているミセス・パンプキンの講評をご紹介させていただくことにしよう。

家庭教育アンケート:
親の「言うこと」ではなく、「行動」こそが子どもに最大の影響を与える

●親の言うことは聞かなくても、行動は真似をする
 私の両親はどちらかというと「自由」を重んじるタイプでしたが、今振り返ると、「ダメなことはダメ」としっかり教育された気がします。具体的には、タバコを吸うなとかです。両親はそういったことも、子どもに言う前に自ら実行することで教えてくれました。
 子どもは親の言うことは聞きませんが、親のすることは真似します。したがって、両親が本を読んでいれば、子どももいずれ必ず本を読むようになります。タバコの例でいうと、両親もまず自分たちがタバコを断つことでその重要性を私に説いてくれました。(慶應義塾大学総合政策学部Kさん)
両親の姿を見て、勉強の大切さを学んだ
 小学校時代は勉強するようにと口うるさかったのですが、中学からはあまり言われなくなりました。しかし両親自身が勉強家であり、その姿を見て自然と勉強の大切さを学びました。
 将来は子どもの主体性を大切にした子育てをしたいと思います。そして口で言うよりも自分の姿勢で教育できるようにしていきたいです。(東京大学大学院工学系研究科Iさん)
父は行動で見本を示してくれました
 父は、私を背中で育ててくれたと思っています。ある日、親父が右足を血だらけにして家に帰ってきました。かなりの重傷でしたが、親父は笑っていました。一人の男として、つらいときでもつらい顔一つせずに笑っているべきであることを教えられました。(早稲田大学政治経済学部Mさん)

 

ミセス・パンプキンからの講評:
親がお金を出すだけでは、子どもは努力しない──努力しない親の子は努力できない

 子どもは親の鏡だとよく言われます。純粋無垢で生まれてくるのですから、親のしぐさや立ち居振る舞いを見て成長し、食物や嗜好品、考え方まで似るのは、自然の成り行きです。親が努力もせずにお金を出すだけであれば、いくら道具立てが揃っていても子どもも努力するようにはなりません。

 父親が経営者で、子どもには大きな自室も与えて、塾に行かせるなど教育費もふんだんにかけているのに、子どもがどうにも自発的に勉強しないという家がありました。
 しかしよくよく話を聞いてみると、親は「勉強しているか」「もっと勉強しなさい」と呪文のように繰り返しているだけで、自分たちはゴルフやカラオケ、その他の社交で外出が多く、在宅時はテレビの画面にかぶりつきでした。そして子どもは入学金さえ積めば入れる大学に入れて大卒の資格さえ持たせれば、あとは家業を継いで安泰だろうというのが本音のようでした。
 言っていることと考えていること、やっていることが一致していないわけですから、子どもが言うことを聞いて、「努力しよう」となるはずがありません。

 一方、今回のアンケートで見えてきたのは、親が「勉強家」で、子どもが読書や勉強をしている親の姿を見て育ち、自分が勉強するのは自然の成り行きだったという家庭像です。
 あるいは、親が勤勉に働く姿を見て育ったとか、商いに苦労する姿を見て、自分も頑張らねばならないと思ったという声もありました。

 子どもは親の説教より、いいことも悪いことも、親の生きざまに影響を受けます。ごく普通の家庭から優秀な子どもさんが育つと、「トンビがタカを産んだ」などと言われますが、これも実は、その親は周りからはトンビに見えていただけで、本質はタカだったというケースが大半だと私は感じています。
 中には親を反面教師としてまっとうに努力する子どもさんもおられますが、親としてはそれに期待するわけにはいきません。

親ができない努力を子どもに要求しても、子どもには届きません。誠実に生き、努力を惜しまない親の姿を子どもに見せ、言行一致で子どもを教育することは、親となった人の基本と心得るべきです。

(※以上の原稿は書籍『一流の育て方』から抜粋して掲載しています)