経営×総務

「iPhoneは電話か、IT機器か」でモメる管理部門のバカバカしさ

iPhoneは電話か、IT機器か
繰り広げられた不毛なバトル

 iPadを一定以上の職位の社員へ貸与する企業が出始めている。そこで勃発しているのが、iPadの導入や運用を、どの部門が担うかという問題だ。IT企業S社では、IT部門、総務部門の主役に加えて、購買部門、人事部門まで巻き込んで、四つ巴のバトルを繰り返している。

管理部門の顧客は社員たち−−。そんな認識が欠如し、あくまでもルール通りにしか物事を進めようとしない、間抜けな間接部門は多くの企業で問題となっている

 事の発端は、「iPadを部長以上に使わせるので手配してください」という、社長からIT部門長への一言だった。IT部門長は「承知しました」と機種選定をし、「社長の指示で機種選定しましたので、後は総務でやってください」と総務部門長へ伝達した。

 総務部門長は、「iPadはIT機器なので、IT部門で購入や運用をするべきだ」と突き返し、IT部門長は、「iPhoneを総務部門で管轄しているのだから、iPadも総務部門で管轄すべきだ」と、堂々巡りのバトルを繰り広げているのだ。

 実はこのiPadを巡るIT部門・総務部門バトルには前哨戦があった。iPhoneをめぐるバトルだ。

 iPhoneはIT機器なのか、電話なのかが争点になり、IT機器であればIT部門が管轄し、電話であれば総務部門が管轄すべきだというわけだ。この戦いは、iPhoneは「Web画面を閲覧できるIT機器なので、IT部門が管轄すべきだ」という総務部門の主張と、「電話ができるので電話。従って総務部門が管轄すべきだ」というIT部門の主張が真っ向からぶつかり合い、結局「既存の携帯電話を切り替えるので総務部門が管轄すべき」との結論に落ち着いたのだった。

 総務部門は、以前、バトルに敗れて管轄せざるを得なくなったiPhoneの遺恨試合としてiPadの管理を断固拒否。「iPadは絶対にIT部門に管轄させる」と、一致団結をしてリベンジに執念を燃やしていた。

 「iPadに電話機能がないことは明白だ。PCの代替機能として位置づけられるのでIT部門で管轄すべきだ」と主張する総務部門が当初は優勢と思われたが、「iPhoneと同じベンダーで手配するわけで、その後のメンテナンスも同一のベンダー、同一の管轄が望ましいので、総務部門だ」とIT部門が巻き返し、こう着状態が続いた。ついには、「購入手配をする購買部門がその後のプロセスも担当すべきだ」という意見が出たり、「どこもやらないなら、人事で引き取れ」という意見も出て、収拾がつかなくなったわけである。

 そのうちに、「社長のiPadはIT部門で手配するが、他は総務部門でやれ」「購入はIT部門でやるが、運用やユーザ対応は総務部門でやれ」といったIT部門からの対案が出るが、それが「われわれはIT部門の下請けではない」と総務を刺激し、対立は激化してしまったのである。その間、数ヵ月iPadの導入は実現せず、個人のiPadを持ち込む社員も現れた。今度は、そのルール化問題も勃発し、混乱を極めたのである。

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山口 博

やまぐち・ひろし/慶應義塾大学法学部政治学科卒(サンパウロ大学法学部留学)、長野県上田市出身。国内大手保険会社課長、外資系金融保険会社トレーニング・シニア・マネジャー、外資系IT人材開発部長、外資系企業数社の人事部長、人事本部長歴任後、現在、コンサルティング会社のディレクター。横浜国立大学大学院非常勤講師(2013年)、日本ナレッジ・マネジメント学会会員。近著に『チームを動かすファシリテーションのドリル』(扶桑社、2016年3月)がある。

 


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