「どうも医者の説明が分かり難い」「抗がん剤で疲れやすくなり体重が減ったので心配」「別の治療法があるのではないか」「インターネットで調べたら、この薬でなくほかの薬が出ていた」――。
がん患者はいろいろな不安要素を抱えている。医療側からの判断に納得がいかないことも多い。そのため日々の生活の些細なことに苛立ってしまう。気持ちが揺れ動く。
そんな時に、話し相手がいれば状況は大きく変わる。相談に乗ってくれるところが欲しい。自分のがんについてじっくり話を聞いてほしい。それも、病院でないところで。
こうした悩みに応える「家」が英国に生まれ、国際的にも注目を集めている。その日本版がこの夏に東京に登場する。
英国のスコットランドの古都、エジンバラで始まった「マギーズ・センター」である。昨年9月、現地を訪ねた。
病院とはかけ離れた空間「マギーズ・センター」
血なまぐさい英国史を彩り、今も町を見下ろすエジンバラ城。その城内、エリザベス1世と張り合ったメアリー女王がジェームズ6世を出産した女王の部屋には観光客の足が絶えない。城から車で20分。ウエスタン・ゼネラル病院に向かった。
エジンバラに2つある大病院のひとつである。立ち並ぶ病棟の端っこに、普通の民家のような場違いの2階建ての建物が目を引く。2階には庇付きの小窓が、空色の木の壁から覗いており、可愛らしい造りだ。案内標識には「マギーズ・センター」とある。