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マイクロソフトに翻弄された
シャープ携帯事業のつまずき

週刊ダイヤモンド編集部
2010年7月14日
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 不意に突きつけられた三行半だった。6月30日、米マイクロソフトが携帯電話「KIN」の販売を中止する声明を出した、という現地報道があった。KINとは、米アップル製iPhoneの対抗製品として、マイクロソフトが初めて自社ブランドで開発したスマートフォン(多機能携帯電話)である。5月6日に米国で発売されたばかりで、今秋にも欧州市場へ投入されるはずだった。

 戦略商品であるだけに、マイクロソフトはその製造を任せるOEM(相手先ブランドによる生産)先企業を厳選した。韓LG電子など並み居る競合を押しのけて、白羽の矢が立ったのがシャープだった。4月12日に、米国においてマイクロソフトがKINを華々しく報道発表した際にも、大畠昌巳・シャープ執行役員が現地へ赴いており、両社の良好な“提携関係”が印象づけられた。

 ところが、である。販売中止の一報が流れるまで、公式にシャープ経営陣へその事実が伝えられた形跡がない。また、打ち切る理由は販売不振といわれているものの、そうした説明もなされていない。

 にもかかわらず、「KINのプロジェクトから携帯向けOS(基本ソフト)へ経営資源を傾ける」(マイクロソフト)としており、マイクロソフト社内では、もはや、販売中止は既成事実化されている。

 シャープ経営陣にとって、寝耳に水の知らせであり、マイクロソフトに対する不信感が募っている。「実害もさることながら、KINの生産計画に従って、部品メーカーへの発注も進んでいた。これらの取引先との関係が心配だ」(シャープ幹部)と、戸惑いを隠せない。今後、訴訟問題へ発展する可能性もある。

 今回の“頓挫”によって、シャープの携帯電話事業における海外戦略は大きく目算が狂ったことになる。携帯電話の国内市場は縮小傾向にあることから、シャープは、2008年6月に中国市場へ参入し、海外販路拡大の方針へと大きく舵を切った。

 その次に据えられたステップが、欧米市場への「本格」進出だった。自社ブランドによる販路拡大を諦めて、OEM企業としての存在感を高める戦略に出た。その第1弾がマイクロソフトとの提携だったのである。

 シャープは、KINの販売計画を公表していないが、少なくとも100万台以上の規模を想定していた模様だ。シャープの携帯電話の販売台数(世界)は、10年3月期の1054万台から11年3月期に1370万台へと伸ばす計画だった。KINの販売中止が決まれば、早くも計画達成に赤信号がともる。なによりも、欧米市場「本格」進出の足がかりを失った痛手は大きい。海外の通信事業者との提携を模索するなど、早期の戦略修正が迫られている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子)

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